筆者 義務教育が行き届き、高校進学率などが高いから、社会の底上げができているのでしょうね。

磯村 ITを活用した問題解決能力に限らず、日本は米国と比べると、各々の能力差が小さいと言えます。その中で競争をするわけですから、自ずと不満が生じやすいのです。

 競い合う相手との差が大きい場合は、不満はあまり感じないでしょう。たとえば会社員の場合、専門的な知識などを兼ね備えた医師をライバル視することは少ないと思います。

 ところが、競い合うのが会社員で、しかも同じような職業で、年齢も近いときには、状況が変わってきます。たとえ仕事のレベルやキャリアに差がついたとしても、「負けた」とは認めない傾向があるのではないか、と思います。しかし、不満は残るわけです。それを解消する1つが学歴なのではないか、と私は見ています。

負けを認めたがらない会社員が
得意とする「学歴の私的利用」

筆者 妙なライバル意識ですね。

磯村 少なくとも米国などと比べると、競争の質が相当に違う国ではあるのです。

 社会がある意味で均質化し、能力差の基準が厳密に示された階層によって組織が設計されていないのが、日本の特徴とも言えます。こういう場合、「勝った」「負けた」という意識を持ったり、互いの差を感じたりすることがあまりないのです。

 たとえば、私は前職(福島大学)で助教授をしていました。そのとき上にいたのは教授です。教員の間では事実上、助教授・教授の2つの階層しかありませんでした。能力やキャリアが異なる多様な人材を2つだけの階層に分けてしまうと、私自身、意識の面で大きな差を感じなくなるように思いました。

筆者 互いに圧迫感を感じないでしょうか。

磯村 それが日本的な競争力の強さとも言えるのだと、私は思います。

筆者 会社員にはなぜ、「負け」を認めようとしない人が現れるのでしょう
か。