ヤッホーからキリンへの委託製造分も約1700キロリットル(15年4月~12月)にのぼり、現在は、滋賀工場にある50キロリットルの仕込み釜を使って製造されている。

 今年の委託分は3000キロリットルを大幅に超える勢いで、「これだけの規模になってくると損益分岐点を余裕で超える」(キリン関係者)状況にまでなったという。

 ヤッホーの自力での成長による製造量の増加が、キリンの心変わりを促した。製造規模の増加、これが、両社が提携に至った2つ目の理由である。

委託可能な製造量の“基準”とは

 ところで、製造委託が可能になる製造量の“基準”はどこなのか。設備投資に頭を悩ますクラフトビールメーカーにとっては、気になるところだろう。

 ヤッホーの場合、井手社長が基準にしたのは4000キロリットルだった。井手社長は08年に提携を断られた後、「4000キロリットルまでは自社で投資することを決断した」。

 4000キロリットルといえば、アイルランド発の黒ビール「ギネス」と同程度の規模である。08年末には、ギネスの日本での製造元がサッポロビールからキリンへ変更されることが発表された。その他、同年に「ヒューガルデン」などで2000キロリットル規模のベルギービールも小西酒造からアサヒビールに製造元が変わっており、井手社長は「知名度のないクラフトビールでも、4000キロリットルあれば提携交渉のテーブルにつける」と踏んだ。

 だが、実際のところ、キリンが求める最低規模はもう少し小さかったようだ。08年も「2000キロリットルあれば提携できた」(牧原達郎・キリン企画部主査)ようで、クラフトビールの認知度があがった現在では、「製造量は、500~1000キロリットル。ブランドが強く将来性があれば、委託分が500キロリットル程度でも請け負える可能性は十分ある」(牧原主査)という。

 もっとも、これはクラフトビールへの注力によって市場の活性化に励むキリンだからこその数字だ。ある外資系ビールメーカーの幹部は、「他の3社であれば、最低でも海外ビールと同等の2000キロリットル以上は求めるのでは」と推測する。