ANA客室乗務員12年。500万人のお客様から学んだ「気がきく人」の1秒の習慣。その業界でダントツの成果を上げている人に共通していたのは、ほんの「1秒」という時間の中で判断を下し、非常に「気がきく習慣」をいつも実行しているということです!

大人としての
「ニックネーム」の使い方

言ってはいけないダメな「ニックネーム」→「大人としてのニックネーム」の使い方


 私は数年前、「はなまるマーケット」(TBS系列)という朝のテレビ番組に、生出演させていただきました。

 打ち合わせ初日のことです。収録を数日後に控え、はじめての生出演で緊張していた私に、当時のディレクターのYさんはこうおっしゃいました。

「松澤さんは普段、何と呼ばれていますか?ニックネームは何ですか?」

 私が「親しい友人には、マッキーと呼ばれています」と答えると、Yさんは

「では、これからはマッキーと呼んでもいいですか?」

と微笑み、「私のことは、Yちゃんと呼んでください」と続けたのです。

 お互いが緊張していたら、いいアイデアは浮かびません。Yさんは、私の心の不安をくみ取り、なごませようとして、「名前の呼び方」を工夫してくださったのだと思います。

 実際、「Yちゃん」「マッキー」と呼び合うことで、そこから、心の距離が一気に縮むのを感じました。

 私は、学校とは違う、「大人としてのニックネームの使い方」があることをYさんに教えていただいたように思います。

 ニックネームで呼び合うことで、初対面の相手とも、心の距離を縮めることができるのですね。

 また、こんなこともありました。広告代理店の営業マン、Iさんのお宅で開かれたホームパーティーに、友だちにさそわれて招待されたときのことです。

 私は、このときはじめてIさんにお会いしたのですが、Iさんは、

「マッキー、このワインおいしいから飲んでみたら?」
「マッキーは、ここに座るといいよ」
「マッキー、仕事は順調?」

と、何度も「マッキー」と呼んでくださったのです。

 きっと、Iさんは、初対面で、心の距離を感じている私の気持ちを、察してくださったのでしょう。

 知り合いのいない私は、はじめこそ居心地の悪さを感じていましたが、「マッキー」と、何度も呼ばれるたびに、少しずつアウェー感を拭い取ることができました。

「マッキー」は、私にとって、いちばんなじみのある呼び名です。

 Iさんは、「どうすれば私の緊張をほぐすことができるのか」を考え、「マッキー」と呼んでくださったのです。

 私が「壁の花(会話の輪から外れている女性のこと)」にならなくて済んだのは、Iさんが親しみを込めて「マッキー」と呼んでくださったからです。

 ビジネスマナーの常識では、相手の名前を呼ぶとき「さん付け」や「役職名」で呼ぶことをすすめています。

ですが、たとえ初対面であっても、状況によっては、お互いに「ニックネーム」で呼び合うことが「おもてなし」につながることもあります。

 なぜなら、相手に対する親近感や信頼感は「呼び名」に顕著にあらわれるからです。

 大切なのは、「相手との心の距離を、いかに縮めるか?」ということだと思います。