ANA客室乗務員12年。500万人のお客様から学んだ「気がきく人」の1秒の習慣。その業界でダントツの成果を上げている人に共通していたのは、ほんの「1秒」という時間の中で判断を下し、非常に「気がきく習慣」をいつも実行しているということです!
「10年の経験」を積んだ人だけが、
「一人前」と呼ばれ
2012年の3月に卒業した新卒が「3年以内に就職先を辞めた人の割合(離職率)」は、大卒でおよそ3人に1人(32・3%)だそうです(※1)。
離職の理由でもっとも多いのは、「キャリア成長が望めないから(25・5%)」(Vorkers「働きがい研究所」調べ)で、全体の4分の1を占めています。
「長い下積み時代よりも、早く次のステップに進みたい」という思いが強いのかもしれません。
私は、転職に反対しているわけではありません。
心身を壊してしまうほど追い込まれているのなら、無理をせず、自分の気持ちにしたがったほうがいいと思います。
ですが、「今が嫌だから」と、目の前の状況から逃げるように辞める人は、次の新しい職場でも、また「今が嫌だから」という理由で辞め、転職を繰り返す可能性があります。
会社の「人間関係」を理由に転職をする人の中には、
「会社が変われば人間関係も変わる。そうすれば、仕事ももっと楽しくなる」
と考えている人が多いようです。
ですが、アンケート調査によると、「転職によって人間関係の満足度が高まった」と回答した人は、わずか「21%」にすぎず、「以前より、下がった」と回答した人のほうが多い(24%)という結果が出ています。そして「変わらない」が55%です([en]転職コンサルタント調べ)。
転職したからといって、人間関係の問題が解決するわけではないのですね。
結局は自分のコミュニケーション力を磨いて、「自分の力」で問題を乗り越えていかないかぎり、転職先でも、同じようなトラブルに追いかけまわされることになります。
毎年、寒い時期になると、顔を出すおでん屋さんがあります。
先日、顔なじみのご主人に、「どうやったら、おいしいおでんが簡単につくれますか?」と軽い気持ちで質問してみました。
すると、いつもは笑顔を絶やさないご主人が、このときは真剣な表情を見せて、私を諭(さと)すように言いました。
「萬紀ちゃん、この店では、簡単なものは出していないよ。
おでんといったって、1日やそこらで覚えられるほど、簡単なものではないからね。
3年あれば、ひと通り、料理のことを覚えることはできる。
けれど、いつもと違う醤油を使っても、いつもと違う鍋を使っても、『同じ味』のおでんをつくれるようになるには、10年はかかる。
大事なのは、たくさん経験することだよ」
プロ意識を持つご主人に対し、思慮を欠く質問をした自分が恥ずかしくなりました。
「一人前になりたければ、10年の経験が必要」というご主人の言葉に、「仕事への向き合い方」を教わった気がします。
私はマナー講師になって7年ですが、まだまだ、未熟です。おでん屋のご主人のように、「どんな状況に陥っても、同じレベルの仕事ができる」ほど、習熟してはいません。
研修の当日に会場が変わったり、人数が変わったり、研修テーマが急に変われば、きっと動揺するでしょう。
先日も、機材の調子が悪くてスライドの投影がうまくいかず、うろたえてしまったことがありました。
「10年で一人前」だとすれば、私にとって残りの3年は「どんな状況に陥っても、同じレベルの仕事ができる」ようになるための修業期間です。
人はハプニングに見舞われるほど、「一人前」に近づいていける。
そのことに気づいてからは、予想外の状況に直面しても、「今、自分は試されているんだ」と前向きにとらえることができるようになりました。
(※1:厚生労働省調べ/新規学卒者の離職状況より)