ヒラリー氏メール問題のその後
〈書籍版での追記〉

2016年7月5日、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官はアメリカ司法省にヒラリー・クリントン氏を訴追しないように勧告する方針であると、表明した。コミー長官はまた、クリントン氏及び彼女のスタッフらによるメールの取り扱いは「極めて不注意」(extremely careless)であったこと、同じことをFBIの職員が行った場合、処罰の対象となることなども語った。

リンチ司法長官はFBIの勧告を受け入れ、クリントン氏を訴追しないことを7月6日に表明した。これによってヒラリー氏訴追はなくなった。だが司法の公正という視点から、厳しい批判が生じたのは当然である。共和党の下院議長、ポール・ライアン氏は次のような声明を発表した。

「国家の安全保障に関する情報を間違って取り扱ったことに対して、クリントン前国務長官を訴追しないのは、ひどい前例をつくることになる」

国務省のカービー報道官は、国務省独自の内部調査を進めるとして、「調査の目的は、できる限りの透明性確保である」と強調した。司法上、クリントン氏は危機を脱したが、政治的には問題は繰り返し議論されていくだろう。