翌朝のミーティングで、私はみんなに現状を端的に説明した。
大手カフェチェーンの新規店が近隣にオープン予定であること、それによっておそらく〈モーメント〉の売上は短期的に押し下げられるであろうこと、それが続けばこの店の経営状態はかなり苦しくなるということ。そして最後に、こうつけ加えた。
「何らかの対策が必要なのははっきりしてるわ。でも、まずはいまここの仕事、いまここにいるお客さんのことを考えて。まだ起きていないことの心配に、みんなの貴重なエネルギーを使わないで。これから必要になる本当の変革のために、心の余力を残しておきましょう!」
私の言葉が届いたのか届かなかったのか、はっきりした手応えはなかった。その場で表立って騒ぎ立てるスタッフは誰もいなかったものの、場合によっては、明日から職探しをはじめる人もいるかもしれない。
ミーティングが終わると、ダイアナが話しかけてきた。
「何だか私たち、昔の連帯感が戻ってきた気がする。まだセルゲイがいたころの〈モーメント〉みたいにね。ナツ、あなたのおかげよ」
セルゲイの名前を聞いたのは、これで2回目だった。〈モーメント〉の共同創業者だったという彼と伯父とのあいだには、いったい何があったのだろうか。
「ダイアナ、悪いんだけど、今日、終業後に少し時間をもらえない?昔のことをちょっと聞かせてほしいの」
(続きは書籍『世界のエリートがやっている 最高の休息法』で)