中小企業・自営業の経営者の学歴に、高卒、無名大学・難易度の低い大学の出身者が多い理由とは

 今回は、中小企業や自営業などの経営者らの学歴に詳しいコンサルタント・栢野(かやの)克己さん(57)を取材した際のやりとりを紹介したい。主に2つの点を中心に尋ねた。1つは中小企業や自営業などの経営者らの世界にも「学歴病」は浸透しているのか、もう1つは大企業に勤務する会社員はなぜ学歴に強い影響を受けているのか、ということだ。

 予めお断わりしておくが、記事の最後で紹介したエピソードについては、今もその事実関係は不明であり、栢野さんもまた把握できていない。しかし、学歴を考える上で何らかの参考になるかもしれないと思い、あえて記事の中に盛り込んでみた。

 栢野さんは、大ベストセラー『小さな会社☆儲けのルール―ランチェスター経営7つの成功戦略』の著者でもある。福岡を拠点に全国で、主に個人事業主や中小・零細企業の経営者を対象にした講演や勉強会を続けていることで知られる。


自営業・中小企業経営者の最終学歴は
高卒、無名大学、難治度の低い大学

筆者 以前、自営業や中小企業の経営者の最終学歴を調べたことがあるようですね。

栢野 私はこの十数年、福岡や全国で自営業や中小零細企業向けに講演や勉強会を約2000回してきました。

 多くの社長と接しながら学歴を調べたのです。彼らから経営の相談を受けたり、講演やセミナーに招いていただいたり、本や記事を書くために話をうかがったりしたときなどに、ヒアリングをしてきました。

 最終学歴で最も多いのは、高卒です。その次に、いわゆる無名大学。その後に難易度の低い大学と続きます。難易度が高い大学は少数派ですね。大企業サラリーマンは高学歴が多いですが、中小零細の独立起業では逆なのです。

 私の地元・福岡市では、旧帝大の1つである九州大学(以降、九大と表記)の難易度が圧倒的に高い。九大を卒業すると、多くは大企業や公務員になります。そこで活躍し、ある程度までは出世(昇格)もするから、辞める人は少ない。ましてや、独立して自営で開業したり、会社の起業をしたりするなんて、めったに聞きません。

筆者 ここ十数年は、一定の入学難易度以上の大学を卒業した人が、会社を創業することが増えているように思います。

栢野 IT系ベンチャー企業ではその傾向がありますが、創業・起業の中で大きな流れにはなっていないと思います。

 私の地元でも、ごく一部に例外はあります。九大を卒業し、一時期小さな会社で経験を積み、その後独立し、会社を興した女性がいます。ぐんぐんと業績を拡大させ、地元では知られた人です。私が見てきた中で言えば、「九大卒」でも創業の叩き上げで成功した人は本当に少ない。