サントリー、サッポロがキリン、アサヒの2強からシェアを奪った。

 先週発表されたビールメーカー大手5社の1―9月ビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の課税出荷量では相変わらずシェア争いが注目の的となった。

 そのシェアではアサヒが37.2%、キリンが37.0%。僅差ながら2年ぶりにアサヒが首位の座を奪還したことが大きく報道された。だが、途中経過のシェア争いよりも注目したいのは、シェアで上位2社と大きく離された3位のサントリーと4位のサッポロの健闘ぶりだ。

 前年同期比でアサヒが0.1ポイント、キリンが0.9ポイントシェアを落としたのに対し、サントリーが0.5ポイント、サッポロが0.4ポイントシェアをアップさせている。下位2社が0.9ポイント分、上位2社のシェアを食った格好だ。

 下位2社が健闘した要因として挙げられるのが高価格帯と低価格帯商品が売れる「2極化」の波に乗ったこと。もう一つが「麦」のイメージを強調したことだ。

 まず目立ったのが低迷するビール市場で堅調となったプレミアムビール。ビール市場ではブランド別に見るとシェアトップの「スーパードライ」が前年比マイナス3.0%となるなど、定番ブランドが軒並み出荷数を落としているのに対し、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」(同16.0%)とサッポロの「エビス」(同5.5%)だけがプラスだった。

 安価な新ジャンル(第3のビール)へ消費者が移る一方で、「金曜日はプレモルの日」などとCMをガンガン流して、「週末や特別な日くらいはビールを、それも味の濃いプレミアムを飲もう」という消費マインドの醸成に成功した結果だ。

 ジャンル別では前年同期比でビールが3.5%減、発泡酒は2割減る一方で、第3のビールは10.3%増加。第3のビールのシェアは33.2%と初めて3割を突破し、じつに3本に1本が第3のビールとなった。

 もっとも、成長市場だった第3のビールも各社が大型新商品を発売したにもかかわらず、売上げの伸びは鈍化。昨年、9年ぶりにキリンがシェアトップを奪取した原動力となった大ヒット商品「のどごし生」でさえ前年比3.8%増と伸びが鈍化している。またキリンでは、3月に発売した「サウザン」が販売低迷から半年で販売終了となったように、競争・淘汰も激化している。

 そんな中、第3のビールでも高い成長が際立ったのがサントリーの「金麦」(前年比28.7%)とサッポロの「麦とホップ」(同26.3%)だ。

 原材料では大豆系の「のどごし生」に対し、商品名で麦を前面に押し出した前出の2商品が高い伸びを示した。

 ビール類では、麦芽比率が高い=美味という単純な関係ではないのは万人が認めるところ。だが、麦芽比率や麦の味を前面に押し出すことでプレミアム感やブランド力を高めることには成功したようだ。

 また、キリンやアサヒが新商品へのマーケティングに注力した中で、サントリー、サッポロともに2分野に集中させたことも大きかった。

 もっとも、猛暑効果も虚しく市場全体では前年同期比2.5%減となり、現行の統計が始まった1992年以降では過去最低を記録。残り3ヵ月間でイレギュラーなイベントもないため、年間でも6年連続となる過去最低の更新は濃厚だ。サントリー、サッポロの健闘も、ビール離れを食い止めることができていないことに根深い問題がある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)

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