──ただ、杭問題の引責で代取が2人に減り、中計の実行段階で集団経営体制の色は薄れました。

 集団的に物事を決めていく体制にも非常にいいところがある。だけど危機が起きたときは別。

 それに、浅野は医薬品事業を担う旭化成ファーマの社長からポーンといきなり旭化成全体の社長になったので、今の組織でいうマテリアルや住宅領域とは付き合いがあんまりなかった。だからこそ領域ごとに担当役員をつくり、それぞれが代取になって次なる旭化成の成長について考えてきたんです。

 今中計の3年間は、売上高3兆円、営業利益2800億円という10年後の目標に向けた基盤づくりの期間です。新中計の趣旨なり、杭問題を起こしたことに対する再発防止の徹底なりを訴える意味でも、今はトップの発信力とリーダーシップが求められますよね。

──杭問題が起こったとき、会長が経営の中心に返り咲くのではないかとの臆測が出ました。緊急時だけに、会長が再びリーダーシップを取るという選択もある。実際のところは?

 これからの私の……(笑)。

──働きによりますか?(笑)確かに、伊藤会長に駄目だって言われたら駄目なのかもしれませんが。

 うん。

──伊藤会長は院政経営から脱却するために、会長の75歳定年制まで導入しました。この定年制が撤回されることはない?

 分かんないなぁ。それはご本人に聞いてくださいよ(笑)。

──ソフトバンクじゃないですが、「やっぱりやります」とか……。

 うーん、どうなんでしょうね。私次第かもしんない(笑)。

──会長の75歳定年制が履行されるとすれば、伊藤会長の任期はあと1~2年。それまでに会長から学んでおきたいことは?

 旭化成の過去のガバナンスの経緯などです。会長は事業を支える基盤の人たちをすごくケアしている。これが旭化成のいい風土ですよね。それを私もしっかり受け継いでいかなきゃならないな、というのは感じます。

 要はコミュニケーションですよね。今回の中計「Cs for Tomorrow 」の多様な「C」は、「クリエーティング」「コネクト」「コンプライアンス」「コミュニケーション」、そして「チャレンジ」。チャレンジっていうのは「高い目標を達成しろー!」ってことじゃないですよ(笑)。変化することへのチャレンジ。前例主義は一見楽だけど、世の中がどんどん変わってきてる中では、現状維持どころか衰退することになるから。

 で、これら「C」の一つがコミュニケーションですよ。こりゃあもう、会長ともコミュニケーションをしっかり取っていかなきゃいけないですよ、はい。