欧州ソブリン問題に米国金融緩和
2010年は「通貨戦争」の年だった

 2010年を振り返れば、世界レベルで「通貨戦争」が起きた年だった。年の前半は、ギリシア危機を発端にしたソブリン問題でユーロの下落が生じた。次いで年後半にかけては、金融緩和に伴う日米金利差縮小で米国がドルを切り下げる異例の状況が続いた。

 11月の米国FRBのQE2実施は、実質的に為替誘導の側面を有していた。世界第二位のGDP国になった中国は引き続き、為替の大幅な切り上げに抵抗する状況が続いた。

 以上の自国通貨切下げによる「近隣窮乏化政策」の環境下、円の独歩高が生じたことで、2010年9月に日本は為替介入に踏み切ることになったが、その効果は限定的だった。

 95年以来の円高状況が、日本の経済に与えた影響も大きかった。円高に伴い、日本は為替介入を行なったが、日本経済にはデフレ圧力の不安、企業には業績不安が生じ、株安が強まった。

 その結果、日銀は10月に包括緩和へと一段の金融緩和を行ない、長期金利は2003年以来の1%割れ水準まで低下した。2010年の金融市場は、株式、金利、債券ともに「通貨戦争」に象徴されるように、「為替の動向が決めた年」と言っても過言でないだろう。

これまでの動きの揺り戻しが生じている?
2011年は本当に「ドル高基調」に転じたか

 2011年の為替市場とその関連で見た市場動向をどう考えたらいいだろうか。2010年11月のQE2以降、それまでの動きの揺り戻しが生じ、米国金利上昇、日米金利差の再拡大が起きた結果、ドルが80円台半ば近くまで戻る状況が生じた。

 また、ユーロもECBの利上げ観測に伴い、大幅な戻しが生じている。2011年の為替市場はドル高基調に転換したと見るべきだろうか。

 筆者の見解を申し上げれば、2011年前半はドル高に戻る動きを想定しているが、ここ数年にわたるドル安の動きが転換したとの認識はない。