買ってきたコーヒー豆をどう保存すべきか。ガラスの保存容器などに入れ替えている人も多いかもしれない。しかし、鮮度を保つには、別の容器にわざわざ移し替えるのは大間違い。科学的な検証実験まで行われ、驚きの結果が。バリスタ競技大会でも、わざわざ「あること」をして臨む人もいるらしい。

テレビで話題沸騰!日本人唯一のワールド・バリスタ・チャンピオンである井崎英典氏の著書『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』から、その内容の一部を紹介する(撮影:京嶋良太)。

え、意外! バリスタが教える<br />科学的に正しいコーヒー豆の保存法

科学的に正しい豆の保存方法とは?

近年、ようやく品質的な側面から科学的に保存方法を検証し考察する取り組みが始まっています。スイスのチューリッヒ大学のCoffee Excellence Centerにおいて「コーヒーの新鮮さをいかに保つことができるか」という趣旨の研究が行われました。

研究において、保存する上でコーヒーの品質に影響を与える要素とは、

(1)酸素
(2)温度
(3)湿度
(4)光

と、されています。上述の通り、品質劣化には複数の要因がありますが、「酸化」が最も大きな要因と考えられています。

コーヒー豆は焙煎すると二酸化炭素が発生し、その二酸化炭素はコーヒー豆の10ミクロンから50ミクロンほどの細孔に閉じ込められています。その細孔から少しずつ二酸化炭素が放出され、最終的には酸化のフェーズへと移り変わります。

二酸化炭素は細孔に閉じ込められていることもあり、一瞬で抜けることはありません。保存環境にもよりますが、大体1ヵ月程度で二酸化炭素濃度が薄れていくと考えられています。

しかし、もし粉の場合であれば酸化のスピードは格段に速くなります。粉にすることで豆の表面積が何万倍にも増加し、酸素に触れる面積が増え、細孔から二酸化炭素が放出されやすくなるからです。

また二酸化炭素の発生量は焙煎度合いによっても異なります。深煎りの方が二酸化炭素の発生量は浅煎りと比べて多いとされています(ドリップの際に浅煎りよりも深煎りの方がよく膨らむのは、二酸化炭素含有量が単純に多いからです)。

したがって、深煎りの方が酸化に至るスピードが速いと推測されています。また高温多湿な保存環境だと、二酸化炭素の発生量が増加し、酸化に至るスピードも速くなります。

「コーヒー豆の新鮮さをより長く保ちたい」と思うなら、「酸化」をできるだけ防ぐことから始めましょう。次節では、その具体的な保存方法を説明したいと思います。

豆はパッケージのまま保存するのがベスト

Specialty Coffee Association が発表した「The Coffee Freshness Handbook」によると、コーヒーは購入した袋のまま保存した方が長持ちする可能性が高い、と結論付けられています。

よくよく考えてみれば至極当然かもしれませんが、適切にパッケージングされたコーヒー豆は二酸化炭素によっていわばコーティングされており、購入後多少の開け閉めがあったとしても酸化が一気に進むことはありません。

しかし、ガラスの保存容器やタッパーなどに移し替える場合、ガラスの保存容器やタッパーは酸素が充満した環境です。したがって、せっかく二酸化炭素によってコーティングされた状態の豆を、酸素が充満した保存環境に移すことは、劇的なスピードで酸化を進めることにつながるのです。

保存パッケージは、パッケージの内側にアルミ箔が貼ってある光を通しにくいタイプの袋が理想的だと考えられています。また温度はできるだけ低い温度で保存するとコーヒー豆の新鮮さを保つことができるとわかっています。常温保存だと1週間から4週間程度しか新鮮さを保てないコーヒーでも、冷凍保存をすると約3ヵ月ほど保存期間を延ばすことが可能です。

すなわち、より新鮮さを保つための保存方法として適切なポイントは、次の3点です。

(1)コーヒー豆は購入時のパッケージのまま保存する
(2)店舗側が使用しているパッケージが遮光タイプだとなお良い
(3)高温多湿に気をつけ、できるだけ低い温度で保管する

したがって、遮光タイプのパッケージであれば、シンプルに買ってきた状態のまま低温で保存するのが最も効果的な方法です。