インフルエンザ写真はイメージです Photo:PIXTA

 今シーズン(2019~20年)のインフルエンザは立ち上がりが早く、流行のピークも例年より、早まる兆しがみえている。

 ここ数年の傾向をみると、まず代表的なA型とその亜種が猛威を振るった後、B型が続くというパターンで、運悪く同シーズンに2回、3回とかかる人も多い。

 A型のうちこれから感染者が増加すると予想される「H3N2」型は、ワクチンの効き目が低い可能性が指摘されており、予防接種を受けた人も警戒が必要だ。

 感染予防の王道は「マスク」「手洗い」。マスクはくしゃみや咳のしぶきを介した飛沫感染を予防し、手洗いは「ドアノブ」や「パソコン」など、感染者と共有している備品や家具の接触表面を介した感染を予防する。

 消毒用エタノール(アルコール)での手指消毒も有効だが、できれば頻回に手をゴシゴシ洗い、水気をしっかり取った後でアルコール消毒という手順を踏もう。

 さて、毎年ちょっとした騒ぎになるインフルエンザだが、糖尿病や心疾患などの慢性疾患がない元気な人が感染した場合は、水分を取って数日間じっと安静にしていれば自然に軽快する。

 一日でも早く症状を軽くしたい方は「ノイラミニダーゼ阻害薬(商品名タミフルなど4種類)」が第一選択薬だ。内服、吸入、点滴と投与方法が異なるので、自分の生活スタイルにあったものを選択するといい。このほか、ひき始めの悪寒、発熱、節々の痛みがある時期なら、麻黄湯を服用しても抗インフルエンザ薬と同じくらいの有効性が期待できる。

 一昨年に「一回の内服で治療が終わる」として注目された「バロキサビル・マルボキシル(商品名ゾフルーザ)」は、現場で薬剤耐性ウイルスが検出されたため、12歳未満の子どもには「投与を推奨せず(日本小児科学会)」とされた。成人への投与に関しては各学会とも断定的な判断を控えている。

 効果そのものは既存の薬と「非劣性」──劣ってはいないという評価だが、耐性ウイルスに配慮すると、安易に処方を希望しない方がよさそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)