「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

階段をのぼるだけで息切れしてしまう。これって運動不足? 大病のサイン? Photo: Adobe Stock

デパートの階段を4階まで休まずに上がれる?

 ふつうに歩くだけでも息が苦しくなる場合、心臓の病気「心不全」が疑われます。心不全とは、血液で酸素をうまく全身に循環できていない状態です。心臓は全身に血液を送って酸素と栄養を届けていますが、酸素がうまくまわらないと脳も体も動けません。そのため、息苦しくなってしまうのです。

 心不全になると満足に外出もできなくなり、活動が減って寝たきりになってしまうことも珍しくありません。どの程度の息苦しさで心不全を疑うべきかは、ニューヨーク心臓協会が4段階の指標を出しています。

 ただ、私が患者さんに説明するときは、もっとわかりやすいようにデパートの階段を例に出します。デパートの階段はお年寄りでも上がれるよう、ゆったりつくってあります。4階までゆっくり休まずに上がれたら、心不全の可能性は低いでしょう。

 日本の法律では4階まではエレベーターをつくらなくていいことになっています。「4階までなら歩いて上れる」という考えがあるからです。ゆっくり上がっているのに、2階や3階でひと息つかないと上がれないのなら、心不全が疑われます。4階まで休みなく上がれるけど、ハアハア息が苦しくなる人は、不摂生もしくは運動不足です。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長
1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。