「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

急激な体の「左側の痛み」は、心筋梗塞を疑う

 心筋梗塞とは、栄養と酸素を届ける心臓専用の3本の血管(冠動脈)が1本でも詰まると起きる心疾患です。血管が詰まって血流が止まると、約20分後には心臓が酸素不足になり、心筋の細胞が壊死していきます。

 詰まった血管は6時間以内に広げないと命にかかわるので、一刻も早い対処が必要です。「翌日まで様子をみよう」などと悠長に考えているひまはありません。

 心筋梗塞は心臓の疾患ですが、実は最初から必ず心臓が痛くなるわけではありません。左のあごから左肩、左わき腹にかけて、どこが痛み始めても不思議はないのです。中には左奥歯が痛いと訴える人もいます。

 左胸が痛い場合でも、ピンポイントで心臓が痛いというよりは、胸全体が圧迫され、胸の中を拳でつかまれているような痛みだといわれます。

 狭心症でも胸痛は起きますが、狭心症の痛みは安静にしていれば治まるので、安静にしても痛みが治まらない場合は、心筋梗塞の可能性が高いといえるでしょう。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長。1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。