スタートアップM&Aのススメサンフランシスコのダウンタウンにそびえ立つセールスフォースタワー(写真左)。新事業展開のために、スラックを買収した Photo:MediaNews Group/East Bay Times via Getty Images/gettyimages,Bloomberg/gettyimages

 2020年は、新型コロナウイルス感染症が拡大していたにもかかわらず、米国では新興企業の活躍が目覚ましかった。上場による資金調達額が約17兆円、ベンチャーキャピタル(VC)の総投資額が約15兆円と勢いがあった。そんな中で注目したいのが、既存企業による新興企業の買収(M&A)である。

 20年の米国企業によるM&A総額は、3兆6000億ドル(約370兆円)で19年と同水準。日本の同年のM&A総額は推定でわずか30兆円だった。米国でも20年前半は、コロナ禍の影響でさすがにペースは落ち込んだが、後半は回復し、前年比30%増となった。

 このようにM&Aが快調な理由は、株価が高いことに加え、低金利で投資先の選択肢が減っていることもあるが、底流にあるのは、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みつつあり、新しい事業創造の流れが加速していることだ。

 M&Aがどのように事業創造に関係するのかを理解するために、まずはM&Aの目的をおさらいしておこう。目的は大きく分けて、(1)既存事業の拡大と、(2)新規事業の創造の二つだ。