M&A,米国
中国やアジアなどの新興国企業ではなく、なぜ米国企業が「お買い得」なのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

増え続ける日本企業の海外M&A
コロナ後に目指すべき国はどこか

 2019年、日本では出生数が死亡数を下回る人口の自然減が初めて50万人を超え、51万2000人となった。これは、鳥取県の人口(55万6000人) に匹敵する数である。

 常に事業成長し続けることを使命とする企業は、人口減少により経済規模が徐々に縮小していく日本国内だけで成長を継続させることが難しくなってきている。そのためここ数年、海外に活路を見出そうとする日本企業は多い。事実、2017年における日本企業による海外M&Aは672件に上り、過去最多を更新している。

 今年は、新型コロナウイルスの影響でM&Aは件数ベースや金額ベースでも減少することが予想されている。 マーケットのボラティリティが高くてバリュエーションがつきにくく、かつ資金調達も難しいこと、さらにディールを進める上でソーシャル・ディスタンシングなどの措置が必要となり、物理的に困難が伴っていることが原因といわれている。

 コロナ禍からの回復時期がいつになるかという点は議論の余地があるものの、このような状況が未来永劫続くということはあり得ない。特に先に述べた構造上の問題を抱える日本企業にとっては、現在の状況を建て直した後には、早晩、再び海外へと目を向ける必要が出てくるものと思われる。

 人口が圧倒的に多い中国やインド、また発展著しい東南アジアなどの新興国に進出する企業も多いが、先進国の中で唯一人口が増え続け、かつ制度の整備により法的安定性のある事業環境を見込める米国も、日本企業の進出先として根強い人気を誇る。

 現在、世界で最もコロナ感染者が多い国の1つであり、かつ、暴動騒ぎに揺れる米国は、進出リスクが高いイメージを持たれるかもしれない。しかし前述の理由などから、感染や暴動が収束に向かう過程で国内経済が修復されるスピードは、欧州諸国や、今足元で感染者数が少ないアジアの新興国などと比べて、格段に早いだろう。「コロナ後」のM&Aを見据える上で、米国は最も魅力的な市場の1つと言えるのだ。

 新型コロナウイルス感染症の影響が収束し、経済が持ち直すとき、もしあなたの会社が米国でのM&Aを経営方針として決定し、あなたがその対象となる事業を国内で率いて相手企業との交渉を任されたとしたら、どうだろうか。どのような事項が想定されるのか、この段階で一度整理して準備をしておくことも一考である。

 筆者はロサンゼルスに拠点を置き、10年以上にわたり日本企業が米国へ進出する際の法的助言を行なってきた。その中で、日米のM&Aに関する法律の違いや海外M&Aについての知見の不足により、様々な困難に直面する企業を見てきている。

 そこで、米国企業を買収するにあたって知っておくべき留意点、ならびにM&A実務における日本企業との違いについて解説していきたい。なお、米国進出の手段として、現地に自らの子会社を設立して一から事業を起こしていく方法で進出を果たす日本企業も少なからずあるが、ここでは既存の米国ビジネスを買収するM&Aという方法で、時間を買い、ダイナミックに進出する手段にフォーカスしたい。

 米国企業のM&Aには、国内のM&A取引と変わらない点も少なからずある。たとえば、事業評価やビジネス上の観点からのアドバイスを行う投資銀行、財務上のチェックを行う会計士、さらに法律上の問題を調査し契約一式を作成し、交渉からクロージングまで担当する弁護士の三者を起用する点である。