時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売されました。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

組織の設計とは、日々の業務、<br />あるいは、プロジェクトにおける<br />PDCAを廻す単位を設計することPhoto: Adobe Stock

成果主義の導入で組織が変調をきたしているならば、
撤廃さえも含めて修正すべき

 成果主義の導入時には、トップを含むマネジャーの振るまい方が成否を分ける鍵になります。下手をすると、日本企業の背景にある「和を以て貴し」の価値観に基づく、チームプレーを重視する貴重な文化を破壊することになります。すぐに気が付き修正を行った企業もありますが、残念ながらそのまま放置してしまった企業も少なくありません。

 さて、経営視点から考えてみると、これが起きた原因は何なのでしょうか。

 日本企業の場合は人事権が上長ではなく、人事部にあることを問題点として指摘する方もいます。従来、日本企業の強みは人事部が、社内をよく見張って誰がどう育っているのかまでもしっかりと見て、どうすれば組織が強く育っていくのかをトップと共に考えていることでした。

 企業が大きくなった場合には、事業部内に総務部を置き、そこがこの日本式の人事の役割を担(にな)っていました。

 ところが人事部に対しても成果主義の評価が行われ、制度を導入した後は、数値目標を決めて、部署の評価も機械的に集計した結果から決まり、人事部の役割も変容する企業が出てきました。こうなると、組織内に起きている様々な問題に目を配り、中長期視点で「組織開発」のための課題を考える役割をどこが司っているのかが不明瞭になります。

 仮に、成果主義の評価体系の導入で組織が変調をきたしているならば、評価体系の見直し、撤廃さえも選択肢に含めて素速く修正を図るべきところです。

 それを「自分たちが導入を行った評価体系だから、失敗があったことにはしたくない」と課題の隠ぺいを図り、修正のPDCAを止めているとしたら、それは本人たちへの叱責の前に、本部組織への「躾」がなっていない点、つまり経営側に問題があると考えるべきです。