時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売(1月13日)になります。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

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ジャック・ウェルチは、自身のコピーではなく
「クローンづくり」を意識した

 GEでは、選ばれたものたちは若い頃から責任を持たされた事業部門の収益目標を達成すべく、また日々、事業運営の腕を上げるべく、与えられた機会(チャンス)に取り組みます。そしてハードルをクリアできれば、責任を持つスパンを拡げ、さらに上のレベルの腕を磨き、経営層入りに一歩ずつ近づくキャリアパスができています。

 結局、「人治」の前提のもとでは、ジャック・ウェルチのもとでさらに磨かれた、GEのような段階的な人材の育成を推進する制度、つまり人を育てる土台が伴っていることが必須であることがわかります。いい会社ほど、社内に人を育てようという文化があります。

 ウェルチは自身のコピーではなく「クローンづくり」を意識したといいます。自分と同じ判断を強いるのではなく、自分と同じような思考ができるように訓練を行いました。

 ウェルチは直属の幹部はもちろん、主要ポジションのマネジャーたちにも直接語りかけることをいとわず、国内外を問わず急に直接電話をかけてくることもありました。キャリアパスと上下の間での思考を植え付ける指導。すべての優良企業は、この二つの工夫とDNA(遺伝子)で成り立っていると言ってもいいでしょう。

 我々が新聞やネットで目にするマスコミの報道だけを見ていると、米国のトップは短期間で変わっていくような印象を抱きます。これは、マスコミにとって扱う価値のある報道ネタである、目覚ましい成功などの「アップ」サイドと、成功者の凋落などの「ダウン」サイドの大きな変化の起きたニュースばかりを目にするために起きてしまう一種の錯覚です。

 米国で上場している企業であれば、大株主からなる取締役会の指名のもとに就任するCEOには、GE並みの高い資本収益性が大前提として求められます。

 もちろんCEOの中には、とりあえず単年度の数字の達成ばかりに走り、自己の報酬のアップとポジションの保全ばかりを図る不心得な輩(やから)も存在します。これは、そのような人材を選んでしまう機関投資家やファンドに代表される米国の取締役会の、事業の捉え方や人材の選別眼のほうに問題があると言えるでしょう。

 本来、CEOに必要なのは、中長期的な視点での挑戦的な施策と、単年度の数値目標の達成のための機動力の二本柱で采配を振ることです。