ユニクロ・GUのセルフレジを巡り、取引企業の特許の有効性を争った知財高裁の裁判で、ファーストリテイリングが敗訴した。この判決により、ユニクロ・GUのセルフレジの設置停止を求めた別の特許侵害訴訟でファストリが不利になる見通しだ。しかし、ファストリは特許を「無効だ」とする訴えを複数起こしており、取引企業の社長は「嫌がらせだ」と憤る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

「特許つぶし」裁判はファストリが完敗
知財高裁がファストリの主張を一蹴

ファーストリテイリングとの特許訴訟に勝ったアスタリスクの鈴木規之社長ファーストリテイリングとの特許訴訟に勝ったアスタリスクの鈴木規之社長 写真提供:アスタリスク

 裁判で特許をつぶそうとする大企業と、権利を守りたい中小企業。法廷バトルを繰り広げている両社のトップが昨秋、“直接対決”していた。

「正確な計算はやっていないが、経費は節約できるものの、(万引きなどの)商品のロス率を考えると、経営的にプラスになる一面だけではないんじゃないか」――。

 2020年11月、山口市のファーストリテイリング山口本社で開催された株主総会。セルフレジは人件費や販売管理費をどれくらい減らせたかという株主からの質問に、柳井正会長兼社長はこう回答した。

 経費の具体的な削減額を語らなかったのは、経営戦略上重要な数字であることに加え、質問者が“因縁の相手”だからだろう。質問した株主は、セルフレジの特許を巡り係争中の取引先、アスタリスクの鈴木規之社長だった。柳井会長兼社長と鈴木社長の直接対決は、おそらくこれが最初で最後であろう。

 セルフレジの特許をめぐる裁判で、知的財産高等裁判所(森義之裁判長)は5月20日、アスタリスク側の特許は無効であるというファストリの主張を退け、「特許は有効だ」とする判決を言い渡した。
 
 争点となっていたのは、アスタリスクが取得した蓋のないセルフレジの特許だ。