【きんざい特別転載】電源の脱炭素化を支える蓄電池技術Photo:PIXTA

脱炭素に資する蓄電池の役割

 今年2月、オーストラリアのニューサウスウェールズ州ハンターバレーに、定格出力120万キロワットの蓄電施設を建設する計画が発表された。昨年12月に米カリフォルニア州モントレー郡で稼働した、世界最大とされるモスランディングエネルギー貯蔵施設(出力30万キロワット/容量120万キロワット時)の4倍の出力となる。蓄電池の大型化が急速に進み、「世界最大」の記録が短期間で塗り替えられている。

 蓄電池とはどのような技術なのか。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)は気象条件によって発電量が変動するため「変動再エネ」と呼ばれ、その出力の変動を平滑化する必要がある。それらによって発電された電気を充電し、必要なときに放電して、繰り返し電気の出し入れを行えるのが「蓄電池」だ。脱炭素の実現には、「電化」を可能な限り進めるとともに、発電時に二酸化炭素を排出せず、安定して出力できる電源を増やすことが重要になる。

 蓄電池は、大きくスマートフォンやノートパソコンなどに使用される「民生用」、電気自動車用の「車載用」、系統安定化のために変電所や発電所など系統側に併設されたり、太陽光発電の自家消費などを目的に家庭や事業所など消費者側に設置されたりする「定置用」に分かれる。本稿では、系統安定のための定置用について考えたい。