「排出量正味ゼロ」の潮流
菅義偉首相は昨年10月、所信表明演説でグリーン社会の実現に注力する方針を示し、2050年までの「カーボンニュートラル」達成を宣言した。
背景には国際的な脱炭素化の潮流がある。15年に開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」は、二つの長期目標を掲げる。一つ目は、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度以下に抑える努力をすること、二つ目は、できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスを取ることである。このうち「排出量と吸収量のバランスを取ること」がいわゆるカーボンニュートラルと定義できる。さらに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年に発表した『1.5℃特別報告書』では、地球温暖化を2度より十分低く保つには50~70年に世界の排出量が正味ゼロになっている必要があり、1.5度以内に抑えるには50年近辺までのカーボンニュートラルが必要とされている(次ページ図表)。