日本経済が低迷を抜け出すために、日本企業はもう一度世界から学びつつ、新しい企業像を模索する必要があるのではないか。そうした視点に立ったウェブセミナー「ワールドクラスの経営」が開催された(協賛:ブラックライン、キリバ・ジャパン、ジェンパクト、Tagetik Japan)。同名の書籍の共著者の一人であるボストン コンサルティング グループの日置圭介氏と早稲田大学大学院の入山章栄教授が、日本企業の課題と将来について語り合った基調特別対談の内容を紹介する。

できていないと思うから
泥くさい努力を続けている

青くさく、泥くさく継続する実践の集積が「ワールドクラスの経営」を生むボストン コンサルティング グループ
日置圭介パートナー&アソシエイト・ディレクター

税理士事務所勤務から英国留学を経て、PwC、IBM、デロイトでコンサルティングに従事。2020年6月より現職。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師。一般社団法人日本CFO協会主任研究委員、一般社団法人日本CHRO協会主任研究委員。著書に『ワールドクラスの経営』(共著、ダイヤモンド社)ほか。

日置 先ごろ、私と共著者2人とで『ワールドクラスの経営』という書籍を上梓しました。ワールドクラスというと、「特別な会社」という印象を持たれるかもしれませんが、そうではありません。当たり前のことを当たり前にやっている企業です。それをグローバルでやっているのは確かにすごいのですが、そんな企業の行動から、日本企業、さらにはこれから人口減少が本格化し、縮んでいく日本という国の将来について考えるための学びを得たいと思います。

入山 日本企業の経営者の多くも、「当たり前のことを当たり前にやっている」と思っていることでしょう。しかし、何かが違う。この書籍では、その違いがしっかり描かれています。

日置 ワールドクラスの企業の方々と接していて、常々感じることがあります。それは「他に一歩先んじようとする」意識と行動を、「青くさく、泥くさく」実践し、「ちょっとした違い」を積み重ね、「決定的な差」を生み出そうと努力を続けていることです。

入山 グローバルで成長している企業は「ちょっとした違い」にこだわり、その実践のための仕組みをつくり上げています。日本企業にも似通った部分はありますが、継続性と仕組み化に関しては及ばないと感じることがあります。彼我の差はわずかではありますが、ある程度時間がたつと、それが「決定的な差」として表れます。

日置 ここでは、ワールドクラスの経営を五つのキーワードから成る「基本の型」として説明したいと思います。「未来への眼差し」、事業の「おこし方とたたみ方」「キャッシュ感覚」「阿吽の仕組み」、そして最後に「価値観」が大事という話です。

入山 未来への眼差しにせよ、価値観にせよ、「ウチはできています」と言う人がいます。しかし、実はたいていできていません。ワールドクラスの企業は、自分たちができているとは思っていないはずです。だから、仕組みを手直ししながらやり続けているのです。