グローバル市場において圧倒的な強さを見せるワールドクラスだが、業種によって顧客、競合、技術、あるいは規制などの環境は異なる。日本企業でキャリアをスタートし、グラクソ・スミスクライン、ノバルティスなどの欧米系ビッグ・ファーマを経て、現在、インド最大の製薬企業、サンファーマのファイナンス本部長を務める田中伸一氏に、国籍による企業マネジメントの違いについて聞いた。(マネジメント・コンサルタント 日置圭介)

創業者率いるスピード経営

日置圭介 田中さんは大林組でキャリアをスタートし、シアトルでMBAを修了してからGEヘルスケア、グラクソ・スミスクライン(GSK)、ノバルティスなどの欧米企業を経て、現在はインドのサンファーマと、ヘルスケア業界でユニークなキャリアを築かれています。医薬品企業は100年以上の歴史を持つ老舗が多いのですが、インド最大の製薬企業であるサンファーマは創立40年ほどですね。

サンファーマ ファイナンス本部長
田中伸一氏

京都大学法学部卒業。ワシントン大学修士課程修了(MBA)。GEヘルスケア、ノバルティス、GSKなどを経て、2018年6月より現職。CFOがカバーする領域でのジョブポートフォリオを意識しながら転職を重ね、主に製薬業界において、それぞれの国籍が異なる企業数社での勤務経験を持つ。

田中伸一 創業者がいまも健在で、組織は活気に満ちています。とにかく意思決定が速く、事業の現場と本社の意思決定者との距離が、他の企業とは比較にならないくらいに短いです。

 たとえば、2019年の買収は、2018年半ばから具体的な話があり、年内に合意して翌年1月に買収が成立し、年明け早々には経営のテコ入れがスタートしました。わずか1年足らずで50人から500人規模へ成長したのです。

日置 1年足らずで10倍規模の成長を遂げるのは驚異的なスピードですね。サンファーマの強みは何ですか。

田中 特定の疾患領域に特化してそこで地位を確立する手法です。その一つが皮膚科領域で、2019年の買収も、その皮膚科領域で行ったもので、M&Aでのよいプラクティスだと思います。

日置 創業者のディリップ・シャングビ氏はメガファーマのご出身ですか。

田中 いえ、家業が医薬品問屋で、取引先のノバルティスやGSKなどからアドバイスを受けたそうです。ところが、リソースが豊富なメガファーマと新興の企業はそもそも事業へのアプローチが異なると考えて、お金や時間がかかる創薬には最近まで手を出さず、市場に早く出荷できそうな事業を買い取って短いリードタイムで上市する、ということを繰り返して差異化をしました。技術的なR&Dを行いつつジェネリック医薬品(後発医薬品)で大きくなりました。とにかく意思決定は速いですね。

日置 経営のスピードといえば、田中さんがかつて所属されたGEなどの米系企業が目を引きますが、欧州系はどうでしたか。

田中 上層部にコンサルティング出身者がいる企業が多いですね。コンサルティングをしていた顧客企業に移って、そのまま経営幹部に残る例です。ですので、ある意味共通のコンサル色を持っている方も多く、企業としても欧米の文化的差異は薄れているように思います。イギリスはまだ伝統的な面が残っていますが、総じて米系にならう形でスピード感が求められます(下図参照)。

日置 日本企業は、左側に寄っていますね。

田中 その理由は社員にとって、短期的な達成へのインセンティブがないからだと思います。