景気の悪化が日々、加速している。

 ホンダがF1から撤退し、ソニーが1万6000人もの人員を削減するといった、日本を代表する企業の苦境をあまりに明瞭に物語るニュースが、人々に衝撃を与えている。

  経済の急落を示す経済指標には事欠かない。政府が12月9日に発表した7~9月のGDP改定値は、4~6月に続いてマイナス成長だった。同時に発表された景気動向指数では、景気の現状を示す一致指数も、数ヵ月後の景気を示す先行指数も大幅に低下している。設備投資の先行指標とされる工作機械の11月の受注総額は、前年同月比で60%も減った。

 つまり、10月以降の景気はさらに悪化するということだ。エコノミストの間では、10~12月、2009年1~3月と、戦後初めて4・四半期連続でマイナス成長に陥るという見方が強まっている。

  では、景気後退はいつまで続くのか。私が、底を打ってプラス成長に戻る時期を5人の民間エコノミストに聞いたところ、2009年4~6月から9~12月までばらついた。ちなみに、2009年度の実質GDPは全員がマイナス成長と答えた。

  だが、経済財政諮問会議の民間議員である吉川洋・東大教授はさらに危機感が深く、「今回の景気後退は、これまで戦後最長だった36ヵ月を超える可能性も十分ある」と予測する。2002年2月に始まった景気回復局面は昨年の10月~12月にピークを迎えたというのがエコノミストたちの概ねのコンセンサスだから、現在は景気後退が始まって1年、吉川教授の予測どおりであれば、今後2年間は続くことになる。

  戦後最長の36ヵ月にわたる景気後退とは、1980年2月から1983年2月までの期間である。1979年に第二次オイルショックが起こり、輸出が鈍化、国内でも中小企業の設備投資や民間住宅投資が冷え、典型的な需要不足の不況に突入した。

 ところが、長期不況といっても、マイナス成長に陥った現在とは様相が全く異なる。1982年の経済成長率は名目で4.9%、実質で3.1%もあるのだ。成長率が鈍化した景気後退であり、政府は景気のテコ入れどころか、「財政非常事態宣言」を発表し公共事業を抑えたままだった。

 景気後退を脱した原動力は、産業界とりわけ製造業の変身だった。日本メーカーの省エネ技術の革新は世界で群を抜き、自動車、家電を中心に再び輸出が復活したのだった。その急増ぶりは米国で大問題となり、ドラッカー氏までが“敵対的貿易”と呼ぶほどだった。