あなたの会社には「経営に資する研修」はありますか?

新入社員研修に始まり、スキルアップ研修、階層別研修、コンプライアンス研修、マネジャー向け研修…など、企業内では様々な研修が企画、実施されている。だが、果たして社員たちはほんとうに学べているだろうか?そして、研修で学んだことを職場・現場での成果につなげることができているだろうか?

企業内で自社にフィットした社内研修を企画立案し、実施・評価していこうとする方のために書かれた研修開発の入門書、『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』から5つのテーマに絞って、研修開発担当者が知っておきたい基本的な考え方を紹介する。(構成・井上佐保子)

 「研修お疲れ様!乾杯!」
 「うまくいってよかったです~」

 A子はグラスになみなみと注がれたビールを飲み干した。

 人材開発部のA子が初めて担当した「入社3年目社員向け研修」の最終日の夜、部長の発案で、慰労会が開かれていた。自らが講師となって行ったキャリア研修も無事に終わり、参加者たちの反応も想像以上に良く、A子は久しぶりに大きな達成感を感じていた。

 A子は部長にこう話した。

 「この部署に異動してきたときは、正直に言うと、研修に対して『時間の無駄』などと、あまり良いイメージを持っていなかったんです。でも、研修開発に携わるようになって、イメージがガラッと変わりました。研修開発の仕事は『前向きな仕事』ですよね。よい場を生み出せれば、会社にとっても、社員にとっても、自分にとっても、『プラス』を生み出し『損』を与えることがない。私、この部署に異動になって本当によかったです」

 部長はニコニコと微笑みながら聞いていた。「君のおかげで、とてもいい研修になって良かった。本当にありがとう!ただ、まだ、3年目社員向け研修は終わったわけではないよ。研修後、何をするかで大きな差がつく。研修の効果を左右するのは、昔から、研修前40%:研修実施段階20%:研修後40%とも言われているんだ。特に近年は、研修の「後」の重要性が指摘されてるよ」

  「部長、わかってますよ」A子はバッグの中から付箋がいっぱい貼られた「研修開発入門」を取り出した。「研修フォローとレポーティング、ちゃんとやりますよ」