(1)板状で一本の廊下に沿って教室が並んでいた旧校舎と比べて、吹き抜けや共用スペースを設けるなど開放的な設計になった新校舎A棟。吹抜のテラスは生徒の交流の場にも (2)南側の都心部を見渡せる開放的なスペースには自習できる机も配置した
拡大画像表示

すべての校舎がバリアフリーでつながる

――南側の共有スペースからは都心方向がよく見えますね。こういう見晴らしの良さは新校舎ならではです。

有山 ここから見る景色は、開成が世界に向かって開かれていることを象徴していると私は思っています。

大友 駅から見えるのが建物のこの部分です。デザイン的にも3階部分の庇を上下に広がっていくようにすることで、開かれた開成を表現しています。

有山 高校側の新校舎はバリアフリー化が完成しますが、問題は公道を挟んで向かい合う中学校舎との接続です。そのため上空通路を設ける必要がありますが、東京都の審査会でその認可が下りるか、ドキドキしました。

――あれはけっこう大変だと聞きますよね。

有山 バリアフリー化とともに、避難経路としての必要性などを強調して認可をいただけました。

――共通利用できる予備教室を増やした点は先ほど伺いましたが、理科の教室はいかがですか。

有山 物理と化学が各2部屋、生物と地学は1部屋ずつの6つの実験室が、現在は図書室と高校の職員室が仮に入っているA棟6階と、隣に建てられるB棟のやはり6階に設けられます。ワンフロアに6つの実験室が集まることになり、理科フロアのようになります。仮設教員室の天井に人がぶら下がっても大丈夫なフックがついていますが、これは物理の実験用のものです。仮設図書館の書架の上に天井から何本も突き出している棒は、化学の実験台の上に換気用のドラフトをつけるためのものです。

――B・C棟ができるのは2023年夏ということですが、それまでは現状のような状態が続くことになりますね。

有山 そうですね。食堂も2期工事中の2年間はなくなるので、弁当をネットで注文して届けてもらうシステムを導入しました。中学と高校の行き来も遠回りをする感じになってしまっています。生徒にはしばらく不便を掛けることになります。

――すべて完成後の姿がいまから楽しみです。

大友 この学校は運の良い人が集まっている場所だと感じています。そのせいか、疲れたときに学校に来ると元気になる。開成自体がパワースポットみたいなものです。新しい校舎もそういう場所になってくれればと思っています。

(1) 1979年まで使用された時計台のある校舎。右側の体育館は50年前の創立100周年記念事業で造られた (2) 2015年頃のファサード。正面右側の体育館の位置に新校舎A棟ができた。左側にある事務局、学生ホール(食堂)も解体され、新しく生まれ変わる  (3)2021年3月まで使われていた普通教室の授業風景(2014年撮影) (4)伝統行事である運動会が行われる第2グラウンド(2010年撮影)。以前は土だったが、2016年に150周年記念事業の一環で人工芝化された 写真提供:開成中学校・高等学校
拡大画像表示