「開成」の“質実剛健”を新時代へ!21世紀の学びを体現する新校舎群高校側敷地にあるすべての建物を解体し、3つの新しい校舎を建設、中学校舎と3階で結ぶため公道上に上空通路も設ける 画像提供:開成中学校・高等学校
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A棟は供用開始、B棟とC棟は2023年夏竣工予定

有山 建築委員会では希望者を募って早稲田高等学院、海城、成蹊、聖光学院、カリタス女子など、いろいろな学校を見学に行きました。

――カリタスは青山学院同様、教科別の教室を設けていますね。

有山 教科教室型の校舎も検討の俎上に上がっていたので、見学させてもらいました。魅力を感じるという声もありましたが、議論の結果、普通教室はそのまま残そうということになりました。開成では組単位で行う運動会の際には、教室が組の本拠地になるということも理由の一つでした。教員の部屋もいままでと同じように、教科ごとの研究室と大教員室で行こうということになりました。

――グラウンドが高台にあり、敷地内に高低差がありますね。

有山 道灌山通りから第2グラウンドまで、敷地内の高低差が約12メートルもあります。新校舎の4階がちょうどグラウンドの高さなのですが、普通教室を3階から5階に配置することで、教室からグラウンドにすぐ出られるようになっています。敷地の段差をプラスに生かすことができたと思っています。

大友 その空間の特性を生かしながら、中高の連携と生徒の回遊性を高め、開放性と快適性を向上させることを念頭に置きました。このA棟の3階をベースフロアとし、中学校の校舎やグラウンドも含めてバリアフリーで移動ができるようにしました。上下に最大でも3フロア分動けば、どこにでもたどり着けるようになります。高校の旧校舎は建て増しを繰り返したこともあり、どこに行くにも階段の上り下りがあり、慣れないと自分がいま何階にいるのか分からなくなるような状態でした。

――開成は建築関係のOBもたくさんいるでしょうから、業者の選定も大変そうです。

有山 業者の選定はすべてプロポーザル方式で行われました。基本計画と基本設計は三菱地所設計に、実施設計と施工は大成建設にお願いすることになりました。

大友 ある程度要望を取りまとめた後は業者にお任せという学校もあるかと思いますが、うちの場合は、細かいことにもたくさん口を出しています。例えば廊下の壁の色使いで、3階は暖色系、上階に行くほど寒色系で合わせています。また、クラスごとに運動会の色が決まっていますので、ロッカーの数字もその色に塗り分けてあります。

有山 照明の位置や点灯区分などについても、使い勝手をイメージしならかなり細かいところまで指定しました。これらはほんの一例ですが。

――それにしても資金集めは大変だったのでは。

有山 理事会の方針で借り入れはしていません。これまでに積み立ててきた自己資金に加え、卒業生や在校生の保護者など、皆さんから寄付を募りました。当初寄付の目標額は10億円でしたが、現時点でおよそ13億円のご寄付をいただいています。開成のOBは結束が強いと言われますが、寄付を通じて開成の底力を改めて実感しました。

「開成」の“質実剛健”を新時代へ!21世紀の学びを体現する新校舎群第2グラウンドに面した特別教室棟も3期工事でグラウンド面より上の部分が解体される。グラウンドが少し拡張されるとともに、新築されるB棟の4階と直結する