社会人の大学院進学を考えるにあたって、見逃せないトピックがロースクール、いわゆる法科大学院である。司法試験制度改革の中で誕生した法科大学院は、一部の例外的なルートを除いて、法曹(弁護士、検事、裁判官)になるためのほぼ唯一の確実なルートである。

 「確実なルート」というのは語弊があるかもしれない。実際の試験=司法試験はその先にあるからだ。

“働きながら”の道が
ほぼ閉ざされた新司法試験制度

 しかし、その試験(新司法試験)は、法科大学院を出ていない限り受験資格が得られない。新司法試験が社会人を疎外したといわれるのはそのためである。退職して勉強に専念することができない、しない司法試験受験生は、経過措置的に続行されている「旧・司法試験」を受け続けるのみである。司法試験受験歴10年を超えるつわものが競い、合格率も極端に低い旧司法試験に、これから取り組むのはどう考えても得策ではないだろう。誰にでも受けられるが、ほとんど誰も受からせない旧・司法試験は、平成23年を最後に実施を打ち切る。司法試験浪人の皆さんの行く末が気になる話である。

 一方で、ロースクールである。ロースクール制度開始の直前は、社会人に恩恵を及ぼすだろう様々な情報が飛び交っていた。社会人経験者が法曹の道に踏み込むことのできる道が大きく開かれていくような幻想が振りまかれていた。

 しかしふたを開けてみれば、話は違う。結果として残ったのは、働きながら司法試験にチャレンジし続ける人間の道を狭め、平成23年には事実上終結させる方針ではなかったろうか。働きながらの司法試験受験は、新・司法試験が開始され、定員増時代の旧司法試験の合格者が激減したときに、その命脈をほぼ絶たれたのである。

就業時間を外した夜間の時間割りが充実
「大宮法科大学院大学」

 ただし、数校だけは例外である。夜間や土日に講義を行なう大学院がわずかだけ残って、社会人に法曹へのルートを提供し続けている。その一校が「大宮法科大学院大学」である。

 「大宮法科大学院大学」は、学部に基礎を持たない大学院大学である。入学者の出身校はそのため多種多様である。そして、4年制の夜間主コースに入ってくる学生にほぼ例外なく共通するのは、そこでなければ通えないという事情である。