ストレスは、ストレッサーと言うのが正しいそうですが、「このごろストレッサーがたまって」なんて言い方する人はいませんから、ここではストレスにしましょう。

 多くのストレスは、目に見えません。陽炎のようなものです。たとえば、同じ環境でふたりの人が仕事をしていたとして、その陽炎のようなものをストレスと感じるか感じないかは、個人差があります。たとえばストレスが「騒音」のように、強さを測定しやすいものでしたら、まだわかりやすい。

 それでも、家の近所でものすごいドリルの音が毎日続く工事が続いている場合、その「騒音」に早々と慣れてしまう人と、もう家にじっとしていられなくなるほど気になって生活ができなくなってしまう人とがいます。ここにも個人差は現れますが、さらに、職場の人間関係のように、ぼや~っと漂う陽炎のような、いわゆる「雰囲気」をストレスと感じるかどうかは、騒音のように強度を数字で表すことができませんから、個人差はもっと大きく現れます。

 ひとりひとりを、血圧や体温のように「あなたは、陽炎を強く感じているから、休んだほうがいいわよ」なんて、診断することもできません。こういったストレスはまことに厄介なのです。

 陽炎ストレスのせいで心身のバランスを崩しかけても、初期段階でうまく対応できる人は少ないと言えるでしょう。たとえば、原因不明のやる気の喪失や不眠、二週間以上の微熱や身体のだるさなど。そのような症状でも、初期のうちに診断を受け、ストレスへの適切な対処をしていれば、ひどい状態にならずに済むのですが、「ただ疲れているだけ」「休めば元通りになる」と、つい専門医の診察を受けないでいる方が大勢いらっしゃいます。

ストレスの受け止め方は人によってさまざま

 初期の段階で、気軽に対処する場所がないこと。これもストレスが一般化できないことと関連があります。実際に、ちょっと休暇を取ったら治ったという方もいらっしゃるのですから、ストレスの受け止め方や対処方法は、人によってさまざまなのです。