
山下一仁
第12回
意外な展開だ。農協と結びついた守旧派の総本山たる自民党から、減反廃止を示唆する農政改革者が現れた。石破農水相その人である。政治生命を賭けてルビコン川を渡った彼の勇気は称えていいのではないか。

第11回
金融危機に伴う保有有価証券の価格下落で、農林中金に巨額の損失が発生している。農業事業の赤字を金融事業の黒字でカバーする方程式が崩れ去れば、農協グループ瓦解のシナリオも現実味を増す。

第10回
農山漁村の活性化なくして、地方の再生はない。だが、そのためには十分な所得を得られる雇用の場を創出する必要がある。それは、現在の過疎対策では不可能だ。

第9回
麻生首相は解散・総選挙を見送ったが、仮に実施され、民主党が政権を奪取しても、戦後農政の転換は期待薄だ。小沢代表の「関税ゼロ」宣言はいつのまにか消えてしまった。

第8回
ギョーザ、乳製品、インゲン…。相次ぐ中国汚染食品の流入が浮き彫りにしたのは検疫体制の不備だけではない。日本はこれを機に、食料安全保障を全面的に見直す必要がある。

第7回
日本に飛び火した中国メラミン汚染事件は、検査体制の不備だけでなく、中国に依存するわが国の食糧安保の脆弱性を改めて浮き彫りにした。もはや対処療法だけでは食の安全は守れない。

第6回
事故米の不正販売問題で、農水省の事務次官が責任転嫁とも取られかねない発言をした。売り手である農水省がまず認識を改めないと、有効な再発防止策はまとまらない。

第5回
福田辞任で総選挙ともなれば、農協が再び跋扈することは目に見えている。組織票の見返りに彼らが要求するのは減反政策強化による高米価維持。だが、それは亡国の道である。

第4回
WTOドーハラウンド年内妥結の芽はまだ残っている。日本は決裂で救われるという甘い期待を捨て、攻めの農政に転じるべきだ。農業開国の第一歩はコメの過保護との決別である。

第3回
WTO農業交渉の決裂は不幸中の幸いだった。重要品目に拘泥する日本の交渉姿勢はそもそも間違っていたからだ。コメすらもはや重要品目に入れる必要はない。

第2回
食料問題に関する洞爺湖サミットのG8共同声明は実はふたつの点で画期的だった。ひとつは農業の拡大支援、もうひとつはバイオ燃料の生産抑制とも取れる表現が盛り込まれたことだ。

第1回
穀物高を招いた需給逼迫。その背景を辿ると、2つの歴史的事象が浮かび上がる。1968年の欧州共同農業政策の策定と1993年のWTOウルグアイ・ラウンドの合意である。
