牧野愛博
文大統領が曺国・前補佐官の法相起用に踏み切ったのは、国民の間で朴前大統領への批判が根強く、野党の支持率は上がらず自らの政治基盤は維持できるとの読みからだ。「反日」を続けるのも根は同じだ。

韓国文政権が日韓「GSOMIA」の破棄を決めたのは「米韓同盟解体のトリガー」にもなりかねず、韓国は「安保鎖国」に踏み出したともいえる。中国の影響力が拡大、一方で米国の「自国第一」が強まるなか東アジアの安全保障の均衡が大きく崩れる可能性がある。

日韓関係が泥沼化したのは文大統領や安倍官邸が“政治的計算”から強硬姿勢を取り合い妥協が難しくなっている面が強い。「取引外交」のトランプ大統領の「仲介」で新たな“軋轢”も予想される。

トランプ・安倍が前のめりになる、金正恩との直談判会談に「死角」
板門店での米朝首脳会談が「政治ショー」に終わったのは、実務者間での協議の積み上げが軽視されたからだ。金正恩委員長との「前提条件なき」会談を打ち出した安倍首相も肝に銘じるべきだ。

歴史的な米朝会談から1年。金正恩委員長の米中露韓との首脳会談の成果は芳しくない。「独裁」のもとで周囲から重要情報があがらないうえ、経験値が少ないため交渉に柔軟性を欠くからだ。

日朝首脳会談を巡る綱引きが始まったが、北朝鮮は拉致問題で落とし所を探り、経済支援を得ることを重視しているようだ。過去の首脳会談で生まれたお互いの不信感をどう払拭できるかが課題だ。

「南北友好対話ムード」を演出したピョンチャン・オリンピックを舞台に、米韓北の綱引きは、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党副部長らが「微笑み外交」を展開した北が主導権をとった。韓国文政権と米国とのチャンネルがないことが米韓でぎくしゃくが目立った背景だ。

ミサイル発射を続ける北朝鮮への米中韓日の“包囲網”の綻びが目立つ中で、米韓首脳会談の共同声明に盛り込まれた中国牽制の「隠し文言」がある。米韓関係が修復され米韓日の結束は固まったが、中国がますます離反しかねない火種になりそうだ。

米空母カールビンソンが朝鮮半島近海に近づき、朝鮮半島は“臨戦態勢”に入った。北朝鮮は「対話」を模索する姿勢も見せるが、核を放棄することはなさそうだ。一方で米国は北が核実験などを実施した際は、「施設への攻撃」も検討しているという。「北の核保有」をめぐって一触即発の「チキンレース」の様相だ。
