大崎真澄
ウェブ上で自分に最適な住宅ローンを簡単に探せる「モゲチェック」が好調だ。コロナ禍で家計の見直しを図るユーザーが増えた結果、住宅ローンの借り換えニーズが拡大。同サービスを通じた借り換えの申し込み数は2020年2月以降12カ月連続で前年同月比の2倍以上を記録し、現在も前年を上回る水準で登録者が増え続けている。そのような背景から直近1年でサービスの利用者数は3万人以上増え、2021年3月には累計で5万人を超えた。開発元のMFSではこの勢いを加速させるべく、プロダクト開発や組織体制の強化に向けた投資を進める。そのための資金として、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により総額で約12.8億円を調達した。

2019年のサービス開始以来、「広告収益の最大化」機能を軸にさまざまなメディアのビジネスを後押ししてきたFLUX。中小規模の媒体を中心にスタートし、今では東洋経済新報社をはじめ大手のビジネス媒体やテレビ局、ブログプラットフォームなどさまざまなメディアを顧客に抱える。リリース2年で契約件数は400件を超え、現在も成長中だ。その同社がシリーズAラウンドの資金調達を実施し、さらなる事業拡大を目指す。今回FLUXに出資したのは共に既存投資家であるDNX VenturesとArchetype Ventures。金融機関からの融資も含めて調達総額は10億円となる。

「経営が苦しくて本当にしんどいよ。どうすればいいかな、篠塚さん」──。新型コロナウイルスの影響で多くの旅館やホテルが苦しい状態に陥っていた2020年4月1日、篠塚孝哉氏の元には宿泊施設を営む経営者たちからそのような声がいくつも寄せられた。奇しくもその日は篠塚氏が約9年間務めたLoco Partnersの代表を退任した翌日のことだった。どうすればこの状況を打破できるのか。篠塚氏が悩んだ際に思いついたのが、宿泊施設の土産物をセレクトショップのような形でオンライン販売する場所を作ることだ。そのようなアイデアから、さまざまな地域の味を楽しめるグルメEC「TASTE LOCAL」が生まれた。

AWSを代表とするクラウドコンピューティングサービスの登場は、ソフトウェアの開発環境を劇的に変えた。必要なインフラをサービスとして安価に提供することで、わざわざ物理的なサーバーを用意せずとも、ほんの少しの資金と1台のPCがあればソフトウェア企業を始められる世界を作った。もし同じような形で「金融版のAWS」のような仕組みを作ることができれば、さまざまな事業者が金融サービスの開発に挑戦できるかもしれない。2013年創業のFinatext(フィナテキスト)ホールディングスは、まさにそのような世界観を実現しようとしているスタートアップだ。

“難病”で苦しむ人を救うための方法として、最新の医療技術やバイオテクノロジーを活用したアプローチが注目を集めている。新薬の開発プロセスにAI技術を取り入れる「AI創薬」はその代表例と言えるだろう。難病であるほど新薬の開発難易度と開発コストが高くなるため、従来とは異なる創薬技術のニーズは大きい。そこでカギを握るのがAIに学習させるビッグデータだ。AI創薬自体は以前からさまざまな企業が取り組んできているが、「AI創薬用のデータがなかなか取れない」ために苦戦してしまうことも珍しくない。大量のデータを集めるためには膨大なコストもかかる。2018年創業のナレッジパレットではその課題を“日本生まれの独自技術”を用いて解決していこうとしている。

「金融サービス」は銀行や証券会社といった金融機関が運営するもの。その前提が大きく変わりつつある。Uberがドライバー向けの金融サービスを開発したり、LINEが決済や資産運用など金融サービスを続々とローンチしたり。“顧客との接点”を持つ事業会社が金融領域に進出する流れが国内外で広がってきた。その中で注目を集めているのが「Embedded Finance(エンベデッド・ファイナンス)」という概念だ。2013年設立のFinatext(フィナテキスト)ホールディングスは、日本国内でいち早くEmbedded Financeの事業をスタート。「金融基幹システムのSaaS化」をテーマに掲げ、証券業の機能に特化した金融インフラサービスを開発している。

事業成長を目指すテクノロジー企業において、“優秀なエンジニア”は欠かすことのできない重要な存在だ。一方で「エンジニアの技術力を定量的に評価すること」は簡単ではない。採用する側にも候補者の技術力を見極めるスキルが求められるほか、選考プロセスにおいては複数の候補者の技術力を比較していかなければならない。この難題へのアプローチとして、GAFAを始めとする海外のテック企業では「コーディング試験(技術試験)」が広く普及している。職務経歴書や面接だけでなく、実際に開発に関する問題を解いてもらうことで、候補者の実力を定量評価するわけだ。2020年12月に設立されたばかりのハイヤールーが目指しているのは、GAFAなどが実践するコーディング試験を“低コストで導入できる仕組み”を作ること。試験に必要な環境をウェブサービスとして提供することで、企業のエンジニア採用を後押ししたいという。

新卒採用の過程では、多くの学生がキャリアの方向性を考える手段として「OBOG訪問」を実施している。かつては同じ大学の先輩に話を聞きにいくことが一般的だったが、近年は複数の「OB訪問サービス」の登場により、大学の垣根を超えてOBOG訪問ができる環境が整ってきた。このような仕組みは何も新卒採用だけでなく、社会人が転職活動をする際やキャリア形成について考える際にもニーズがあるのではないか。そのような考えから生まれたのが社会人向けのOB訪問サービス「CREEDO(クリード)」だ。

調剤薬局向けのSaaSを通じて業界のデジタル活用を進めるカケハシが事業を拡大している。2019年から2020年にかけて40億円を超える大型の資金調達を実施しながらサービスを改良し続け、個店からチェーン店まで導入店舗を拡大。現在は成約件数ベースで全国数百法人に利用が広がっている。昨年には主力事業のクラウド型電子薬歴システム「Musubi(ムスビ)」を“薬局体験アシスタント”としてリニューアルするとともに、2つの新サービスを加えてラインナップを拡充してきたカケハシ。その同社が薬局の支援を加速させるべく、新たな一手を打つ。カケハシは3月23日、セプテーニ・ホールディングスの連結子会社で、薬局向けのサービスを手がけるPharmarketの発行済株式を取得する契約を締結したことを明かした。

上場株式や債券といった「伝統的資産」に対し、不動産やワイン、クラシックカー、アートなどは「オルタナティブ資産(代替資産)」と呼ばれ、新たな投資対象として期待されてきた。このオルタナティブ資産への投資が近年グローバルで加速している。それに伴い、この領域にテクノロジーを融合することで市場を変えようとするプレイヤーも目立つようになってきた。2014年に事業をスタートした日本のWealthParkもその1社だ。同社が目指すのは個人投資家でもオルタナティブ資産にアクセスできる環境を作ること。言わば「オルタナティブ投資の民主化」だ。

レシート買取アプリ「ONE」を始め、消費に関連する事業を複数展開するWED。約1カ月前には、提携先のサイトで買い物をするだけでお金がもらえるサービス「C」を公開したばかりの同社が、また新たなプロダクトをローンチした。「dim.(ディム)」と名付けられたこのアプリは寄付の体験をシンプルにする。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、ビジネスシーンにおいても営業や会議、飲み会などさまざまな要素のリモート化が進んだ。そのような状況を受けて、新たなビジネスチャンスも生まれつつある。以前から慣習として根付いていた「手土産」もそうだ。商談や営業がオンラインに移行することで、従来のように対面で手土産を渡す場面が減った。それなら社会情勢の変化に合わせて手土産もオンライン化してしまおうというのが、3月17日にリリースされた「リモート手土産」だ。

現役の歯科医師でありながら、自身が2018年に創業したスタートアップ・NOVENINE(ノーブナイン)で代表取締役社長を務める竹山旭氏。「歯科医療を通じて予防医療をアップデートする」ことをミッションに掲げて以前からオンライン歯科相談サービスを展開してきたが、竹山氏が創業時より思い描いてきた“本丸”のプロダクトの販売がいよいよ近づいてきている。「SMASH」と名付けられた同プロダクトを一言で紹介すると、口臭ガスの測定機能と電動歯ブラシとしての機能を併せ持った“スマート歯ブラシ”だ。自社EC上にて5月からの販売を予定しており、それに先駆けて3月16日よりクラウドファンディングサービスの「Makuake」で先行予約を受け付ける。

イトーヨーカ堂を始めフレスタやライフコーポレーションといったスーパーのDXをサポートしてきた10Xが、今度はドラッグストアのDXに向けた取り組みを始める。同社は東北6県にてドラッグストア「薬王堂」を322店舗展開する薬王堂と共同で、店舗の商品をスマートフォンから注文し、店頭または店舗駐車場で車上受取(ドライブスルー受取)できるアプリ「P!ck and(ピックアンド)」の提供を開始した。

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が起業を目指す東大関係者や東大関連のシードベンチャーを対象に実施しているインキュベーションプログラム、「東大IPC 1st Round」。今回で4回目を迎える同プログラムの新たな支援先5社が発表された。

Webサービスやシステムを手掛けるテクノロジー事業者を中心とした成長企業向けに「法人カード」を提供するUPSIDERがサービスを拡大している。「限度額の低さが事業の成長の足かせになってしまっている」「決算漏れや不正利用などガバナンスの面で使いづらい」といった従来の法人カードでは満たせなかったニーズに対して、新たな解決策を提示することで顧客を獲得。2020年9月の正式ローンチ以降は毎月50%成長を維持し、現在は数百社にサービスを展開する。そのUPSIDERがさらに事業を加速させるべく、ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額10億円を調達した。

「これから不動産売買の領域においてもエージェントがますます大事になると考えているので、個人をエンパワメントすることで市場を活性化したい。良いエージェントを増やす仕組みと良いエージェントと出会える仕組みを通じて、カスタマーが最適な仲介サービスを受けられるようにしていきます」そう話すのは不動産売買領域のDXに取り組むスタートアップ・TERASS(テラス)で代表取締役を務める江口亮介氏だ。2019年創業の同社では「個人の不動産エージェント」に光を当てることで、中古不動産の売買のあり方を変革しようとしている。3月9日には複数のVCから2.2億円を調達。その資金を活用しながらさらなる事業拡大を目指すという。

「世の中の至る所にAIを入れていきたいんです。AIは人間の役に立つものだと考えていますから、そのAIがさまざまな領域で、たくさんの人の役に立つことで世界もより良くなるだろうと思っています」。そう話すのはAI inside創業者で代表取締役社長CEOを務める渡久地択氏だ。2015年設立の同社はAI-OCR(AIを活用した文字認識技術)を軸とした自社プロダクト「DX Suite」を中心に、AI関連の製品を複数展開。2019年12月には東証マザーズへ上場した。当初こそ「金融大手などエンタープライズ向けにAI-OCRを提供する会社」という色が強かったものの、近年は初期費用無料・月額3万円から利用できるプランを武器に中堅中小企業への導入が加速している。2019年12月末時点で510件だった契約件数は、1年で1万2942件まで拡大した。急成長の背景には何があったのか、渡久地氏に話を聞いた。

開発なしでネットスーパーのアプリを立ち上げられるサービス「Stailer(ステイラー)」。同サービスを開発する10Xが事業を拡大している。昨年5月のローンチ後、最初のパートナーとして大手スーパーのイトーヨーカ堂とタッグを組み同社のネットスーパーアプリを展開。12月には広島の老舗スーパー・フレスタとも共同でアプリの運営を始めた。その10Xが新たに首都圏と近畿圏で275店舗のスーパーを展開するライフコーポレーションの支援に乗り出す。10Xとライフは3月8日より「ライフネットスーパーアプリ」の提供をスタートした。同アプリはライフが自社で運営してきたネットスーパーのモバイルアプリ版という位置付け。ライフにとってモバイルアプリの提供は、初めての試みとなる。

建設業界は約60兆円規模とも言われるほどの巨大市場である一方、労働人口の高齢化や過酷な労働環境ゆえの人手不足など深刻な課題も多く抱えている。3K(キツイ、汚い、危険)な現場のため若い人材がなかなか定着せず、業界内の労働人口における60歳以上の割合は全体の25%を超える。人手不足にも関わらずIT化などが遅れており、90年代以降は労働生産性がなかなか上がらなかった。そんな建設業界の課題を解決するべく、ロボット工学を活用したプロダクトを開発しているのが2020年創業の東京大学発スタートアップ・ARAV(アラブ)だ。
