すき家と松屋が7月1日から約1週間、牛丼、牛めしの期間限定値下げキャンペーンを行った。期間中の牛丼、牛めし(並盛り)の価格は250円。4月中旬、6月上旬に引き続き、今年度に入ってじつに3度目のキャンペーンだ。

 両社の値下げキャンペーン、時期も価格も同じになるのは偶然ではない。すき家の値下げ対象店舗は、約1450店舗のうちの1割程度。「(松屋と)競合する店舗に対しては、それなりの対策は打たせていただきます」。すき家を展開するゼンショーは、同社のキャンペーンが松屋対策であることを明かす。

 競争が熱を帯びたのは昨年12月だ。それまで牛丼(並盛り)の価格は、すき家の330円が吉野家を加えた牛丼大手3社の最安値だった。しかし、12月3日に松屋がその下をいく320円に改定。すると、7日にはすき家が280円に改定し、最安値を奪還した。

 ところが松屋は今年4月、今度は毎年恒例の春のキャンペーンで250円に値下げ。冒頭述べたすき家と松屋の3度の値下げ競争が始まった。

「同じマーケットの中に同じ牛丼業態があれば必ず競争になる。そんなときは味の好き嫌いもあるでしょうが、やっぱりいちばん値段というもの(の影響)が大きい」。松屋フーズの緑川源治社長がこう語るように、牛丼は売り上げが価格に左右されやすい。

 すき家は、280円に価格を改定した昨年12月から、それまで苦戦していた既存店売上高が好転。特に4月からの3ヵ月は、前年同月比ほぼ20%増で推移している。

 松屋も、250円を打ち出した4月から既存店売上高が前年を超える。すき家には及ばず2~6%増ほどだが、オペレーションコストが低い牛めしの注文比率が3割程度から約6割に増えることで、店の効率は高まっているという。

 そもそも、松屋にとって期間限定の値下げキャンペーンは手堅い策といえる。安さに対する消費者の慣れが生じたり原材料価格が高騰したりすれば、キャンペーンを行わなければいいだけで、変化に対応しやすい。

 キャンペーンを起爆剤としながら、牛めしより粗利益率が平均5%ほど高く、松屋が強みとする定食などを強化すれば、利益の確保も狙える。7月のキャンペーンでは、定食の強化が見込める店舗は値下げ対象外にする工夫もした。

 一方、米国産牛肉の輸入規制による原価高騰などで価格競争から一線を引く吉野家は、6月の既存店売上高が前年同月比15.1%減になるなど、不調が続く。通期の見込み自体が前年度比11%減なので想定内ともいえる。しかし、松屋は7月のキャンペーン終了後も関西地域を中心に250円を継続する。競合2社の値下げ競争が長引くようなら、吉野家の商圏はさらに侵食される可能性が高い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

週刊ダイヤモンド