新卒採用において、企業はどのような人材を求め、どの事業に注力しているのか。本連載では、各業界をリードする企業がどのような採用戦略を打ち出しているのか分析し、今後の動向を探る。第3回では「外食業界」を取り上げ、業界の専門家に最新のトレンドや企業が求める人材像を聞いた。(ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)
好調のファストフード、不調のファミレス
他業態がファミリー層を取り込み
コロナ禍で客足が遠のいて大打撃を受けた外食市場だが、足元では多数の企業で“完全復活”の様相を呈している。
日本フードサービス協会の推計によれば、外食市場の規模は2022年に約20兆円、23年は約24兆円と拡大。現状は、コロナ禍前の19年(約26兆円)とほぼ同水準まで回復している。
「コロナ禍後の客足回復に加え、原材料の高騰を背景に各社が値上げを行った結果、客単価が上昇したためだ」と、富士経済アナリストの松田壱成氏は話す。
しかし、業態別に見ると好不調の「二極化」が顕著になっている。
一口に外食といっても、ファストフード、ファミリーレストラン、アジア・エスニック料理、西洋料理、日本料理など業態は幅広い。その中で特に好調なのはファストフードで、コロナ禍でもテイクアウト需要が強みとなり売り上げを維持できた。
例えば、ファストフード大手の日本マクドナルドホールディングスは、19年12月期連結決算の売上高2817億円、営業利益280億円から、23年12月期は同3819億円、同408億円まで伸ばした。ドライブスルーやカフェの強化など、新たな需要に対応できたのが成功の要因だ。
一方、24年3月期決算で売上高1276億円(前年同期比19.7%増)、営業利益53億円(同262.5%増)でようやく利益がコロナ禍前の水準に戻った松屋フーズホールディングスでは、牛めしやカレーなどを提供する「松屋」と、とんかつ店の「松のや」の複合型店舗を増やしている。
また喫茶店でも、コメダ珈琲がロードサイドに駐車場付きの店舗を増やしてファミリー層に人気となっている。コメダホールディングスの業績は24年2月期連結で売上高432億円、営業利益は87億円と年々業績を伸ばしてきた。
ドライブスルーや駐車場を完備した郊外型店舗も増え、複数のブランドを併設することで、ファミリー層など幅広い客層を獲得して巻き返しを図ろうというわけだ。
次ページからは外食業界の構造や仕事内容、そして採用状況を再確認し、各企業がどのような人材を求めているのかを探る。また、この業界への就職希望者が企業で活躍し、成長していくために必要な準備や、面接で重視されるポイント、注目すべき資質についても解説する。