合従連衡が進むはずだ──。1年半ほど前から、化学業界の幹部がリチウムイオン電池の部材分野について異口同音に予見していたことが、着実に現実のものとなっている。
8月31日、国内総合化学2位の住友化学が、主要4部材の一つの正極材なる部材で、一発逆転をもくろむ一手を投じた。正極材メーカーの田中化学研究所を連結子会社化すると発表したのだ。
田中化学は、規模は小ぶりながら「技術力が高いと業界では有名」(競合役員)な知る人ぞ知る企業。その第三者割当増資を約65億円で引き受け、14.8%の出資比率を50.1%に引き上げる。
リチウムイオン電池の部材分野では目下、大小のメーカーが入り乱れた苛烈な競争が繰り広げられている。正極材でも日亜化学工業やベルギーのユミコアなど、大きくシェアを握るメーカーがある一方で、中国など、新興勢力による追い上げもすさまじい。
住友化学は20年の長きにわたり研究開発を進めてきたものの、なかなか事業化できずに今に至る。独自の正極材の開発には成功するも他の主要部材との兼ね合いが悪くお蔵入りするなど、電池部材の開発特有の難しさに直面してきた。