世はまさに「街歩き」ブーム!
老若男女を魅了する東京の商店街
高齢化やスローライフのトレンドが本格化するこのご時世、巷では空前の「街歩き」ブームが起きている。なかでも、老若男女を問わず、街歩きの人気スポットとなっているのが、古きよき時代の風情が漂う商店街だ。
商店街と聞くと「シャッター商店街」という言葉を思い浮かべ、地域経済から取り残されたエリアという印象を持つ人も少なくないだろう。しかし、現実はそうとも言い切れない。なかには、廃れるどころか新しい時代のニーズを採り込み続け、地域経済の中心であり続ける商店街も少なくない。
世界一の都市圏である東京と、その中心となる23区には、特にそんな商店街が多い。それぞれの区の「区民性」も異なれば、そこに根付く商店街にも、それぞれ別の「顔」がある。この連載では、人を魅了して止まない商店街のパワーと魅力について、区や商店街に関連したデータと共に分析する。この連載を読んだ「街歩き派」のあなたは、次にどの商店街を訪れてみたくなるだろうか?
第1回は、荒川区の商店街をご紹介しよう。東西に長い荒川区だが、そのほぼ中央を都電荒川線が走る。始発の三ノ輪橋から町屋駅前を経て荒川車庫前まで、区内には13の駅がある。平均駅間距離約380m、昼間の運行間隔はおよそ5分おきだ。
「チンチン電車」の由来となった発車時のベルの音を聞くと、どこかノスタルジックな気分になるが、どっこいバリバリ現役の「区民の足」だ。この都電荒川線沿線を中心に、荒川区内には50の商店街があり、今も区民の生活を支えている。
実は、荒川区の商業集積規模は決して大きくない。小売店舗数、売場面積、年間販売額のいずれも23区中最下位である。しかし、1km2あたりの小売店舗数では、第7位に跳ね上がる。つまり、主に小さな小売店が集まっている商店街が、地域経済において重要なウェートをを占めているということだ。歩いて行ける身近な存在であることが、商店街の最も大切な要素だとすれば、荒川区はむしろ「買い物が便利な街」だと言うことができる。
商店街にとってのもう1つの要点は、日常の生活ニーズにいかに応えてくれるかだ。商店街と聞くと、八百屋、魚屋、肉屋、酒屋、米屋、パン屋、牛乳屋、電気屋、金物屋、荒物屋、薬屋、たばこ屋、自転車屋と、日頃の生活と切り離せない業種が思い浮かんでくる。