日本唯一の「梅酒杜氏」と梅酒ヌーボーで
売上は10億円に拡大!

希少価値の高い「紅南高梅」を使ったこだわりの梅酒「紅高梅」

 中野BCで製造している梅酒は、もちろん単なる変り種ばかりというわけではなく、本物志向の徹底追求にも余念がない。南高梅のなかでも、希少価値の高い「紅南高梅」を使い、梅の育て方、収穫時期、選別からはじまって、熟成期間などにこだわり尽くした梅酒「紅南高」は、日本最大の梅酒コンテスト「天満天神梅酒コンテスト」でグランプリに輝いている。

 収穫から果実の取り出しまで指揮をとったのは製造部長の山本佳昭さん。日本で唯一「梅酒杜氏」の肩書きをもつ。「梅酒杜氏」と命名したのは、中野さんだ。

梅酒漬け込みセミナーを行う、製造部長であり「梅酒杜氏」の山本佳昭さん

「日本酒の世界では、造り手である杜氏が崇拝されるのに、梅酒では造り手の姿が見えない。『梅酒杜氏』とを名乗り、前に出ていくことによって、消費者の方に梅酒についての知識を増やしてほしかったのです」(中野さん)

 その意を受けて、山本さんは日本中を行脚する。イベントで梅酒について語り、梅酒漬け込みセミナーを自社の蔵、都内のホテルやレストラン、はてはキャンプ場で、レクチャーすることもある。

 また同社では「梅酒の新たな楽しみ方」として「梅酒ヌーボー」の提案も積極的に行っている。

中野BCの「梅酒ヌーボー」

 梅酒は通常、収穫時期である6月に仕込み、11月下旬から12月ごろに梅の実を取り出したのち、さらに半年以上タンクで熟成させる。

「日本酒は新酒、ワインもボジョレーヌーヴォーがあるのに梅酒はスタートがない。時系列がはっきりすることによって、商品としてトータルブランディングができる」と、中野さんは考えた。

 そこで果実を取り出した「漬け込み半年」のものを瓶詰めし、「梅酒ヌーボー」として商品化したのだ。新酒の時期には、「梅酒ヌーボー」イベントを開く。「熟成前だからこそのフレッシュな味わいが楽しめます。そして毎年、梅の実の生育状況によって、梅酒の味も異なります」と山本さん。かくして中野BCの売上高は約30億円のうち、梅酒部門の売り上げは10億円にまで成長。全社売上の5割を梅果汁なども含めた梅関連事業が占める。

中国、東南アジア、フランスで大人気
「梅酒は世界中で飲みやすいお酒」

 和食のユネスコ無形文化遺産登録以降、日本酒が海外において注目を浴びているように、梅酒にも注目が集まっていた。当然、梅酒業界では海外市場でのさらなる需要拡大を目指している。

中田食品営業部企画開発課の小串慎一さん。本社工場敷地内にある直営売店では、洋酒用オーク樽で熟成貯蔵した「紀州南高完熟梅酒 樽」も人気

 中野BCでは輸出を強化し、現在25ヵ国に出荷。デザートワインのように甘いワインを楽しむEU圏では、梅酒をリキュールとして受け入れやすいようで、フランスでは「紅南高」が約8000円という価格にもかかわらず好評だという。

「インバウンドとしてのニーズも期待できる」と語るのは、田辺市・中田食品営業部企画開発課の小串慎一さん。主力の梅干しだけではなく、梅酒に力を入れる同社本社工場敷地内にある直営売店は、海外からの観光客も多く訪れる。「中国、東南アジアのお客さまに梅酒が『おいしい』と大好評です」と小串さん。しかも、贈答用として1万円近くする高価格帯の商品が売れるという。