販売先は、富裕層の多い百貨店「YATA」。

 青梅の甘い香りに誘われてやってきた買い物客は、たいてい「『梅?は?なにそれ?』というリアクションです(笑)」と下岡さん。梅酒は知っていても「青梅そのもの」は見たことがない、という人がほとんどだという。

「このまま食べられるの?と聞かれますね」

 そこからは猛勉強の成果を発揮である。英語に訳したパンフレットを見せながら「梅とは日本独特の果物で、和歌山県というところにあって、400年前は薬として使われていて健康にもいいし、美容にもいいんです」とイチから説明した上で「青梅で梅酒が作れる」という話をすると「ああ、『梅酒ってあのチョーヤの?』と言われます(笑)」。

 もちろんのこと「そうです!あの梅酒が造れるんです」とすかさずトーク。当然のごとく、自分で梅酒を漬けた経験があるひとはほとんどいない。店頭に用意した梅が漬け込まれた梅酒の瓶を見せながら、説明。お酒を使わない梅シロップの瓶も用意。

「水やソーダ、牛乳で割ってジュースにして飲めますよと説明して、同時に試飲してもらいます」(下岡さん)

 味は大好評。「おいしい!梅シロップも子どもに飲ませたい!ぜひチャレンジしてみたい」と言って買っていくという。

今年6月に行われた香港での実演販売風景。まるでセールのよう!

 次第に梅コーナーは人だかり。我も我もと青梅を抱え、店頭にスタンバイした漬け込み用の瓶、砂糖、焼酎の「梅酒一式セット」を購入していくお客であふれかえった。持参した梅ゼリーや梅の実も大人気。たしかに、当日の写真を見せてもらうと「たんなる特売品のセール」にしか見えないくらいだ。

 しかし特売品どころか青梅の価格は日本の2倍!それにもかかわらず持っていった約5トンは完売。

「日本のものは安心安全という認識が高いのか、飛ぶように売れました」(下岡さん)

梅酒を漬け込む実演を行う下岡さん。「『今年も来るのを待っていたよ』というリピーターの方も多かったんです。『もっと美味しくなる方法はないの?」と尋ねに来たお客さんもいらっしゃいました」

 今年も、6月、梅の生産者とともに香港で実演販売を実施。YATA以外にも高級スーパーでの店舗数を拡大し、持参した約13トンはまたまた完売である。

「店の担当者から来年はもっともっと持ってきてくれー、3倍でも4倍でも持ってきてくれー」と言われました(笑)」と下岡さんはその成果を笑顔で語る。

 香港での好評を受けて、シンガポール、タイでの実演販売もスタートした。商談会にも積極的に参加する。海外へはばたく和歌山の梅。

「今後の夢は、和歌山の梅の『全世界制覇』です」と榎本さん。

「たとえばカレーだって、インドから日本にやってきて、『インド人じゃあるまいし』というほど食べるようになりましたよね(笑)。日本の食文化が注目されるいま、頑張れば、梅もその土地に合った根付き方をするんじゃないかと思うんです」(榎本さん)

 下岡さんも言う。

「プラムじゃなくて日本の、和歌山の『UME』として、広げていきたいです」

 ふたりが声をそろえた。

「世界を目指せ、ゆー、えむ、いー!」

 日本の食を「味わう」だけではなく、「食文化としての楽しみ方」も売り込む。和歌山の梅は、日本のカルチャーとして世界に進出する、新たな可能性を秘めたメイド・イン・ジャパンの「お宝フルーツ」かもしれない。

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