ワンマン経営と
ボトムアップは両立できる⁉

神田:非常に強烈なリーダーシップを持つ社長がいると、どうしてもイエスマンの組織になりがちです。
 そして、「自分で考えない社員」が育ってしまう。
 武蔵野には「経営計画書」という会社のシナリオがあって、方針も規律もロジックもしっかりしています。
 社員は、そのシナリオに従いながらも、一方で、しっかり自分自身を持ち続けています。武蔵野は、とても不思議な会社ですね。

小山:私が社長に就任した当初、武蔵野は、超・超ブラック企業でした。
 元暴走族がゴロゴロいましたから(笑)。「サラ金」から追われている社員が、30人くらいいましたね。「アコム」じゃなくて、「悪夢」です(笑)。
 当時は、神田さんがおっしゃるような自立した会社ではなくて、社長のトップダウンの会社でした。
 私が「こうする」「ああする」と言い、社員は、嫌々ながらしかたなく、それに従っていた。
社員教育も、年間300時間はしたと思います。
 たとえて言うなら、かつての武蔵野は、「小山昇」という強力な機関車が、社員という車両を無理矢理引っ張っている状態でした。
 けれど現在では、各車両にモーターがついて、全員が走れるようになった。
 つまりボトムアップによる改善と実行ができるようになったのです。

神田:元暴走族相手に年間300時間の教育をするのは、大変だったのではありませんか?
 普通の社長なら、手にあまると思います。
 なぜ、やりきることができたのですか?

小山:私もかつては不良社員でしたからね。
 元暴走族の猛者たちが「やくざより怖い」と恐れたのが、私でした(笑)。
 暴走族だからといって、バカなわけではありません。
 彼らが人に迷惑をかけるのは、「自分が評価されていない」からです。
私は彼らの存在をきちんと認め、ときには、「グー」を使って頭を撫でであげた(笑)。だから、彼らは変わることができたのです。