原点canを見出すためには、「どういうときに自分は嬉しいか」を考えるといいです。それが自分の動機の原点となります。何をしているときに嬉しいのか、無心になれるのか。あるいは視点を変えて、「褒められると嬉しい」とか「達成したときに嬉しい」といった意味での志向性を考えてみることも重要です。

 いずれにしても、楽しいとか嬉しい、快適といった感情的要素を真ん中に置いて、自らのこれからの進路を決めてみることを考えてみていただきたいのです。もしかしたら、それは日本人にとって一番苦手なことかもしれませんが…。

 大隅先生の例で言えば、一番根源的な志向性は、「人のやらないことをして何かを探求すること」だと思います。加えて「メカニズムを解き明かしたい」という気持ちを他の人よりも強く持っているのだろうと推察します。

 皆さんも、自らの志向性を要素分解してみてはいかがでしょうか。一度原点canに立ち戻って、自分が嬉しい、快適だと思える別の道はないかと考えてみてはどうでしょうか。

原点canに
忠実であれ!

 私の場合も、突き詰めていくと、一番好きなことは「メカニズムの解析」です。私も好奇心がとても強くて、その上で、難しいことを平易に構造化してみせることが大好きでした。だから小さいときから自分は科学者に向いていると思っていました。

 子どものときに一度、ある簡単なテストで、先生から「君は文系だ」と言われ、悔しくて怒り狂ったことがありました。

 しかし、私は色弱だったので、当時理科系に進むのは困難でした。一番なりたかった医者はもちろん、少なからぬ大学の理系コースが色弱を拒絶していた時代でした。

 そのまま世を拗(す)ねていたら、普通のサラリーマンになっていたのではないでしょうか。しかし、人一倍、私は原点canに固執しました。文系であっても、メカニズムの解析で飯が食えないかと考えたのです。

 理系への道が閉ざされた時、最初は自分の好き嫌いを全く考慮せず、功利主義的に公認会計士を目指しました。ところがこの道は、明らかに自分の原点canに合わなかったため、勉強にも身が入らずにすぐに挫折しました。

 その後、文系大学にもかかわらず物理のゼミに入り、先生の勧めもあって管理工学の道に進みました。管理工学は社会を数学モデルで構造化する学問です。今度は性に合っていたらしく、楽しく学ぶことができました。