SNSの注目度では
最初からトランプ氏が勝っていた

 クリントン氏への糾弾姿勢が支持拡大につながったのは、SNSからも明らかだ。Twitterのフォロワーがトランプ氏の方が遥かに多いというのはかねてから指摘されていたが、フィンランドの調査会社・ezyinsightsによると、Facebook上のエンゲージ数でも当初よりクリントン氏を圧倒していたという。

 そのSNSのなかでも最も多くの「いいね!」を獲得した「画像」が、陰影のあるハードボイルド風のトランプ氏の写真に、《she would be in jail》という文言を添えたものだった。これこそがトランプ氏支持者の多くが、「既存政治家の不正追及」を求めている証左と言えよう。

 一方、クリントン氏のFacebookで最も人気があった画像は、爽やかに微笑むクリントン氏に「I'm with her.」というメッセージが添えられたものだった。このように、クリントン氏が「クリーンな政治家」イメージを押し出せば押し出すほど、トランプ氏側の《she would be in jail》というメッセージの「価値」が上がっていく、というのは説明の必要がないだろう。

 つまりトランプ氏は、クリントン氏との政策論争を誹謗中傷合戦のレベルに引きずり落とすことで、政治経験ゼロという自らの弱点をカバーしつつ、支持拡大へ結びつけるという離れワザをやってのけたのだ。ポピュリズムだなどという批判もあろうが、これが選挙の現実でもある。

 さらに、トランプ氏が幸運だったのは、このようなメディア戦略をさらに加速させるような心強い「援軍」があらわれたことだろう。

「クリントン・ニュース・ネットワーク」だ。

 なにそれ?という人もいるかもしれないので説明をすると、あまりにもクリントン氏に肩入れをした「偏向報道」を行うCNNを保守系ニュースサイトが揶揄した言葉で、トランプ氏自身も気に入ったようで、演説のなかで用いている。

 たとえば、ニューヨーク・マンハッタンで爆発事件が起きた時、CNNはトランプ氏が「ニューヨークで爆弾が爆発したと聞いた」と発言したことを受けて、詳細がわからないうちに「爆弾」と決めつけたのが軽率で、大統領には向かないと批判した。が、実は他のテレビ番組ではクリントン氏も「爆弾事件」と言っていたのだ。

 こういう経緯からおわかりのように、日本のネットで「朝日新聞」などが叩かれる文脈でつかわれる「マスゴミ」みたいなものだと思ってもらっていい。