株には勝つために知らなければならない方程式が存在した

 いきなり偉そうなことを言って、反感を買ってしまったかもしれませんが、私自身も、株式投資を始めた当初は、その他大勢のアマチュア投資家の一人でした。

 ただ、たまたま始めた時期が良かったので、いざ売買を始めてみると、面白いくらいにうまくいきました。

 少し下がった株を買っておけば、数日から数週間後には値上がりして利益になりました。元手200万円で始めた株式投資でしたが、気がついてみたら1000万円に近くに増えていたのです。

 しかし、ものごとはそんなに簡単にはいきません。その後、リーマンショックと震災ショックという二度の危機が訪れました。

 結局、すべての混乱が終わった頃には、1200万円近くにまで増えていた私の資産は、元の200万円に戻っていました。

 しかし、それでもまだ、私はラッキーだったといえます。投資家のなかには、市場から強制退場させられた方も多くいたと聞いています。

 ちなみに、ここでいう強制退場とは、資金がなくなるだけでなく、信用取引の担保もなくなり、すべての株を強制ロスカットさせられることです。

 ここまでくると、元手の資金は信用分のマイナスも加わり、ほとんどなくなってしまいます。

 事業も株取引もそうですが、元手資金(タネ銭)がなければ、商いができません。結果、株式市場から、泣く泣く退場を余儀なくされるわけです。

 私はというと、どうにか、ギリギリのところで踏みとどまっていました。信用取引もしていたわけですから、ほんとうに、このときだけは運が良かったとしかいえません。

 一方で、これは予想していなかったことですが、経営者としての経験が、相場の世界でもある程度通じることがわかりました。

 その頃は、経営規模も拡大していました。15名ほどの社員数となり、銀色にかがやく汐留の電通ビルの目の前に、オフィスをかまえていました。

 そうした事業家としての経験、リスクを敏感にかぎわける直感力で、このときの危機をなんとか泳ぎ切ったというほうが正しい表現かもしれません。

 当時は、知識や技術なんていうものはほんとうに浅く、今振り返れば、からっきしダメだったわけですから。