年明け以降の株価の頭打ちや米国長期金利の低下が、トランプ氏の保護主義的な発言を背景としていると考えれば、就任演説は株式市場にとっては好ましくない内容であろう。他方で、売られ過ぎた債券の買い戻し材料となりそうだ。ただ、トランプ相場一服の中でも米国長期金利がなかなか下がらない可能性は高い。インフレ懸念からFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げペースが加速するとの思惑が払拭されないためだ。

 米国の景気拡大局面は80カ月を超えており、そろそろ末期に差し掛かる。一般的には景気拡大末期には労働市場逼迫化とインフレ率上昇が観測されるが、それを示すようなデータが多々出ている。

 16年1月に原油価格は大幅に下がったが、その分17年1月の原油価格は前年比で大きく上昇しており、一時的にではあるが、物価上昇率がかなり高めに出やすい。

 つまり、トランプ新政権による景気刺激策がなくとも利上げ期待から米国長期金利が上昇しやすかったのがこの1~3月であるといえ、株式市場や為替市場において多少の失望が生じても長期金利が下がりづらいのである。

 保護主義的政策が世界経済拡大を抑制し、他方、労働生産性の伸びが低迷する中でのトランプ政権の景気対策も米国のインフレを加速させるには至らないだろう。

 結局、米国長期金利は低下し、ドル円もまた円高に向かう可能性が高いが、当面はインフレが意識されやすい時期だ。米国長期金利が明確に下がっていくのは夏以降であろうか。

(SMBC日興証券為替・外債ストラテジスト 野地 慎)