今後の商売のために、彼らも現代中国を少しは理解しておいたほうが良いだろうと思い、隆嗣は清義の成功談を引き合いに出して事情を披瀝した。

「なるほどねえ、そのあたりに中国ビジネスの闇が潜んでいるという訳か」

 宮崎が頷き、岩本がしたり顔で話を継ぐ。

「だからこそ、ウチは伊藤さんのような中国通の人に顧問をお願いしているんです」

「何の話をしているんだ?」

 清義が隆嗣へ問い掛ける、もちろん中国語だ。

「君の出世話を、面白おかしく話していたんだよ」

「おいおい勘弁してくれよ、俺を笑い者にするのは……。彼らは住宅会社の人間と言っていたが、大きな会社なのか?」

「一部上場会社さ。東洋ハウスは、日本で五指に入る住宅メーカーだ。この話がまとまれば、君の瑞豊木業公司に毎月400、500リューベー(m3)の発注が来るよ。月10コンテナだ」

「それは助かる。もともと銀行関係との付き合いで買い取らされた会社だから、赤字にさえならなければ、稼働率を上げてもらうだけで十分さ」

「フフフ……」隆嗣が皮肉交じりの不遜な笑いを返した。

「何がおかしいんだ」

「付き合いで買収したなんて言ってるが、あの工場の目の前に貨物列車専用の物流駅が出来る予定なんだろ。そうなれば、更地にして土地を売るだけもでかなり儲かるだろうね」

「君の地獄耳には恐れ入るよ。どこから情報を仕入れているんだい?」

 呆れ顔の清義を尻目に、隆嗣は涼しい顔のままで答えた。

「君と同じで、それは内緒だよ」

「まあいいさ。それまで工場を維持しなきゃならないから、是非とも商売を繋いでくれよ」

 そこへ、隆嗣の携帯電話が鳴り始めた。

(つづく)