受動喫煙対策をめぐる議論が沸騰しているが、先日「キャンサー・リサーチUK(英国)」から「電子たばこ」の安全性に関する研究結果が報告された。
研究では、普通のたばこの喫煙者、喫煙+ニコチン補充療法(NRT)、もしくは電子たばこで禁煙を試みている最中の人、そして禁煙後にNRTか電子たばこに切り替え、半年以上を経過した181人について、唾液と尿中の有害物質濃度を検査。
その結果、NRTや電子たばこの使用者は喫煙者に比べ、発がん物質や有害物質のレベルが低いことが判明したのだ。
ただし、喫煙を完全にやめない限り有害物質レベルの低下は認められず、恩恵を受けるには完全に禁煙する必要があることも示された。研究者は「われわれの研究成果は、電子たばこが喫煙より安全で、長期的なリスクが少ない可能性を示唆している」としている。
英国では禁煙補助の選択肢として電子たばこが利用されている。
昨年秋に報告された疫学調査によると、英国在住の17万人を10年間追跡した結果、電子たばこの普及に伴い、禁煙成功率が2006年の11%から、15年の19%に上昇したという。
電子たばこに好意的な研究者からは「禁煙成功率が50%以上改善された可能性がある」とのコメントが出たが、疑義を挟む専門家も少なくない。
一方、米国は未成年者の電子たばこ使用を規制したFDA(食品医薬品局)を筆頭に、電子たばこの禁煙効果には懐疑的な立場。一番の理由は、10代のうちに電子たばこを使っていると「本物」の喫煙者になる確率が上がるからだ。
実際、米国の高校生を対象とした調査では、10代の喫煙者の4人に1人が喫煙に先立つ30日間に電子たばこを使っていたことが判明。禁煙補助どころか「喫煙予備軍」をつくるようでは本末転倒だ。
日本では、タバコの葉を電子機器で加熱する「蒸気」タイプが出回り始めたばかり。製造企業は安全性を唱えているが、長期的な影響は不明だ。普及に注力する前に長期の健康リスクや、若年層への影響を調べる必要があるだろう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)