「ここに来ればあると思ったのに」
と言われるのが一番辛い
――紀伊國屋書店新宿本店といえば、日本を代表する書店さんですが、ここならではのご苦労ってありますか?
水上 一番大変なのは、お客様の期待です。「ここ来ればあると思った」と言われることですね。どうしたって、絶版本は無理なんですね。でもそれもお客様には言い訳にしか聞こえないんです。これはどうしようもない問題ですが、一番辛いです。
――期待される辛さですね。
水上 ここ新宿本店の売りって何だろうってよく考えるんです。いつでもロングセラーを揃えておいてある書店。『もしドラ』などをどーんと売る書店。どちらも新宿本店の姿です。でも最近は、新宿本店は下手すると平均的で、個性がないのが個性かな、とも思います。競合店ひとつとってみても同じようなお店はない。駅前でもないし、ビジネス街でもないし、多層階ですし。でも何をやってもいいかなって思ったりします。
いまはとにかく来てくださったお客様に楽しく帰ってもらいたいです。
「もう絶版でありません」とお伝えするだけでなく、「こういう本ならありますよ」って言えるようになりたいですね。
「ここに来るとあると思った」と言われるのはとても辛いですが、10年、20年経っても言われ続けなくちゃいけないと思うんです、この店は。
*「きれい」と思ってけど売れなかった本は何ですか? という質問に答えてくださった本は、インタビューアーの編集本でした。喜んでいいやら、情けないやら。次回は、あのヒット本の仕掛けについて語ってもらいます。