定番書が売れなくなってきた時代で
書店として出来ることは何か

――ずっとビジネス書を見てこられて、売れ方の傾向は変ってきたのではないでしょうか?

紀伊國屋書店新宿本店 水上紗央里さん(前編)<br />「ここに来ればある」<br />いつまでもそう思われる書店に<br />棚商品のメンテナンスをする水上さん。「ここに来たらあると思ったのに」と言われるのが一番悔しいという。

水上 以前は定番と言われる本格的な本がよく売れていましたが、最近はそれほどでもなくなってきました。なぜだろうと考えたんですが、噛み砕いたわかりやすい本が沢山でてきたからじゃないかって思います。

 わかりやすい本ってページ数少ないじゃないですか? 定番書の内容をピンポイントで解説しているです。それで全体像は理解できるでしょう。だから定番と言われる重厚な本より売れるんです。

 それはいいことですが、そういう本を読んで終わりというのは、もったいないなって思います。もう一段階上の本を読めばもっと勉強になるんですけど。そうならないのが、もどかしい。

――定番書を売るために、どのような工夫をされていますか?

水上 しつこく積むことです。日々新刊は多いですが、当店の場合、こういう定番書は、絶対に外さないという暗黙の了解があります。

 どの本が定番ですか、と聞かれて「この本です」と言ったとします。それで、「では会社で使うので15冊下さい」と言われて、揃えられなかったら悔しいんです。心から薦めた本が「その冊数はいまありません」なんて絶対に言いたくないんです。だからできるだけのことはやりたいなって。

 さらに言えば、そういう本を揃えているだけじゃ気がすまないです。どれだけ多くの人が買いにこられてもある、という状態。だから積んでおきたいんです。当店は他の同じ大きさのお店と比べても、既刊書の割合は高いと思います。