本が売れなくなったと言われるが
本を求めている人はたくさんいる

――出版不況と言われますが、売り場ではどういう工夫をされていますか?

水上 お客様は買いたいと皆さん思っておられるんです。欲しい本が決まっている人もいます。ですから「品切れです」と言わざるを得ない情況を、極力ゼロにすることを目指しています。

 誰だって欲しいものが手に入ったら、また次に欲しいものを探すじゃないですか。そういういいサイクルが生まれればいいなって思っています。

――いつも思うのですが、平台での本の並べ方が面白いですよね。

水上 平台にはいろんな本が並んでいます。お客様は、目当ての本を見つけるとその横の本も見ちゃうと思うんです。そこで似たような本やちょっと違うかもしれないけど関連しそうな本を置いておくことで、お客様の連想が広がるんじゃないかと思って並べています。そうやって何冊か買ってもらえると、とっても嬉しいです。

 どういう連想を抱いてもらうかは人それぞれでしょうが、否定的にはとられないと思うんですよ。気になって、その本とその本の関連を探そうとすると思うんです。

 最近では、ユニクロの柳井正さんについて否定的に書いた本が出版されました。その横には、柳井さんが推薦している本を並べています。そこで、見た人が柳井さんってどんな人だろうという連想が膨らめば面白いかなって。どういう効果を狙っているかというのはないんです。連想ゲームみたいに、本を前にしたお客様の想像力を掻き立ててられればいいなって思っています。

紀伊國屋書店新宿本店 水上紗央里さん(前編)<br />「ここに来ればある」<br />いつまでもそう思われる書店に<br />売り場のそこここに、思わず立ち止まってしまうような工夫が凝らされている。

――売るための工夫っていろいろあるんですね。

水上 あと、お客様が欲しいと思っていた本がなければ、お客様の要望をできるだけ出版社の人に伝えるようにしています。「こういう本を探している人が多いですよ」と。接客していると、お客様が求めていることを直接聞けるわけじゃないですか。そういう声をどれだけ拾い上げられるか。これも書店の仕事だと思っています。