三顧の礼を尽くして
G8に専門家の派遣を依頼せよ

 では、どう対処すればいいのか。何よりもまず世界の英知を集めることである。幸いにも、G8には、スリーマイル事故を起こしたアメリカ、チェルノブイリのロシア、電力の大半を原子力発電に拠っているフランス等の原子力大国が顔を揃えている。三顧の礼を尽くして、これらの国から原子力の専門家をわが国に派遣して貰い、国際的なチームを作って、沈静化のための方策を検討して貰うべきではないか。

 もはや、福島第一原発事故は国内問題ではない。すでに国際的にも、喫緊に解決すべき世界の重要課題となっているのだ。可能なら、お隣の中国や韓国の専門家にも参加して貰えばいい。とにかく、政府は、これまで世界が経験したことのない緊急事態なのだから、世界の英知を結集して「助けて貰おう」という覚悟を早く決めるべきである。

 いったん腹をくくれば、G8の冒頭で、第一原発の現状を包み隠さず吐露すると共に、情理を尽くして専門家の派遣を訴えればいい。アメリカやロシア、フランスは原子力発電の推進を継続しようとしているのであるから、喜んでわが国の招請に応じるだろう。彼らにとってもメリットが大きい。第一原発の沈静化に協力することは、データの入手や貴重な経験を積むばかりでなく、反原発の国内世論対策として最も有効な方策の1つであることが、すぐに了解されると思われるからである。

 一方、わが国のメリットはもっと大きいのではないか。まず、世界の英知が結集されるということは、より合理的な解決策が得られる可能性が高まるということである。次に、こうした専門家がわが国に集まれば、彼らがそれぞれの言語で、自由に日本と第一原発の現状や展望を発信する機会が自ずと増えよう。日本人が下手な外国語で「日本は安全です。観光に来てください。日本の物品を輸入してください」等と発信することに比べれば、はるかに信ぴょう性の高い発信が得られるのである。グローバルなあらぬ風評被害を避けるためにはこれがベストの方策であろう。