大きい館があった。その内の一部が地震で倒壊した。立て直すには、相当なお金がかかる。館の主はもちろん、この館の住人は、これまで以上に働いてよりたくさんのお金を稼がなければ、以前の生活レベルを維持することはできない。
つまるところ、これが、現在のわが国が置かれた姿なのである。臨時の出費が強いられる以上は、その分を余計に稼ぎ出さなければ、貧しくなるしかない。復興資金を増税で賄うか、国債に依存するかは、極論すれば当面のファイナンスに係る技術論でしかない。肝心な論点は、これからわが国はどうやって復興資金を稼ぎ出すのかというまさにその1点に尽きるのだ。結論から言えば、その担い手の中心は、民間企業と、大都市である東京でしかありえないであろう。
日本の競争力の低さは政治の問題でもあるが、
ビジネス界でさえ27位と低迷している
スイスのIMD(経営開発国際研究所)が発表した2011年世界競争力年鑑によると、わが国の国際競争力の総合順位は26位であって、トップはアメリカと香港が同点で並び、3位はシンガポールであった。他にトップ10の中には、東アジアから台湾が6位に入っている(5月18日、日本経済新聞)。26位の内訳は、政府が50位、ビジネス界が27位であった。なお、この調査は東日本大震災前に行われているので、現時点においては、下方修正される可能性が高い。
政府の50位は論外だが、より深刻な問題は、わが国の経済を牽引する民間セクター、すなわちビジネス界の国際競争力が27位と低迷していることである。これが、先進国の株価がすべて回復し、すでにリーマンショック以前の水準の2割高のレベルに達しているのに対して、ひとりわが国の株価のみが大震災以前でもさえも、リーマンショック以前の水準の2割安近辺で低迷している根本の原因である。